12
再び親父さんと修平さんの話だ。
「俺が東京へさ出稼ぎに来た理由は言うまでもねえ、俺の息子、修平を高等学校さに行かせてやりたかったからだず。中学卒業で田舎で働いて、あいつの青春ばそれではかわいそうだ。高校さ行ってよ、友達と好きなことを夢中でやるべきだ。いろんな知識と教養を身につけてよ、恋もしてよ、自由を謳歌する時期が必要なんだ。俺は中学しか出てないけんど、それくれえの理屈はわがる」
なるほど、学費を稼ぐために賃金の多い、道路工事に応募したのか。
「修平も15歳になのかあ、もう高校生だなした。どこさの高校へいぐか、決めたのけ?」
ある日修平にそう聞いたんだ。
するとよ、あいつはほんなごつ、びっくりしよる顔してはあ。
「父ちゃん! 何言ってんだず? 俺はよ、中学卒業したら、働いて父ちゃん楽にさせるつもりだず。んだな高校だなんてはあ、第一うちにはそんな金さねえべした」
今度は俺がびっくりした。あいつ、そだなこつ考えていたのかって、あいつの気持ちが分かるからよ。いじらしくて、いじらしくて、涙が出そうになるのを必死に堪えてな、
「修平、ここさ座れ」
俺は鬼になって言った。
「父ちゃんを見損なうでねえぞ。ええか、父ちゃんはまだまだ男盛りだ。毎晩おめえとせんずりをかいて、あれだけ勢いよく、雄汁さ飛ばすとこ見とるから、分かるじゃろう。だから、まだまだ身体を張って若い者と一緒に働ける。父ちゃんはお前には、高校くれえは出してやりてえし、出すくれえの金は稼げるつもりだ。おめえは、俺のために貴重な若いときを、犠牲にしてはなんねえよ」
それから俺は、ランニングシャツと、ステテコと越中まで脱ぎ捨てて、修平の前に全裸で、しっかりと胡座をかいて、あいつを説得した。
「いいか、修平。しっかり、父ちゃんを見るんだ。男として、この身体が頼りないか? 息子の一人も養えないような、貧弱な父ちゃんか?」
話しを聞く修平も、目に涙を溜めていた。
「いや、父ちゃん、そんなごたあ、ねえず。父ちゃんは頼りになる男だ。俺の自慢の父ちゃんだ。俺も父ちゃんみてえな、男らしい人間になるっていつも思うんだ。だがよ、父ちゃんに楽させたいと思うのも、本当だ」
「いいか、修平。男というものは死ぬまで、誰かに頼りながら生きていくものではねえ。いざというときは、裸一貫で稼ぐくらいの覚悟が必要なんだ。しかしな、人間というものは、ときには誰かを頼って助けを求めることもあるんだよ。それは恥ずかしいことでねえ。その代わり、必ず受けた恩を返してから死なねばならなねえ」
俺は自分の胸をぱんと手のひらで張り、もっともっと頼りにしろと、まだまだ息子を頼りになどしないぞ、と身体を張って見せたかった。
「いいか、修平。俺とおめえは血こそ繋がってないが、普通の親子以上の間だと思う。お互いの考え、性格、悩み、好みなんかはもちろん、黒子の数からケツの穴の形、ちんぽの大きさ、金玉の重さ、舐めてやると泣いて喜ぶ場所まで、知り尽くしている。隠し事もなければ、恥ずかしいこともねえ。すべて明らかにしたな」
「んだよ。父ちゃん。父ちゃんの雄汁の味まで、忘れねえさ」
「俺たちは精液を互いの体に注ぎあったんだず。同じ血が流れているんだ。だからよ、ここは父ちゃんを男にしてけろや。お前を高等学校さ出してやったと、自慢させてけろ」
修平は泣きながら、俺に抱きついてきた。俺の胸にしがみついてきた。
「父ちゃんだ。やっぱり俺の父ちゃん。世界一の男だ」
俺もたまらなくなってなあ。涙でぐしゃぐしゃに濡れている顔を手のひらで挟んでから俺の唇で、涙をすすって、舐めとった。そしてそのまま、下の方まで唇をずらし、自然にお互いの唇が重なるようにした。
ゆっくり、そして自分の気持ちを込めてな、自分の分厚い舌を修平の口の中に挿入した。
修平は、それに応えるように夢中で俺の舌に吸い付き、いつまでも、いつまでも力強く吸い続けてくれた。
修平の手を取ると、俺の男そのものに導き、しっかりと握らせた。太く逞しい男であると確認させるために。
修平は、それに応えるように力強くぎゅっと俺の男を握ってくれた。
「父ちゃん、ごめんよ。父ちゃんはまだまだ男だの。逞しい、かっこいい男だの。父ちゃん、俺、高校さいぐよ。んだども、高校さ卒業したら、必ず父ちゃんを助けるからな。この恩は一生忘れねえ。そしてよ、父ちゃん以上の立派な男になるからな」
俺も修平の気持ちを感じてなあ、泣いたっけなあ。泣きながら修平のちんぽを握ってなあ。お互いのちんぽ握り合ってなあ、親子の情を確かめたんだ。
13
親父さんが話すその最愛の息子さんはすでに亡くなっているという。
その後の親子の間に、いったい何があったのか。
次に俺が聞いたのは修平さんのために上京する親父さんの話しだった。
それは、いよいよ修平が高校受験間近になって、毎日夜遅くまで勉強する日々が続いていたころだ。
親父さんはいよいよ東京に出稼ぎに出発した。
年末の上野駅は様々な人々が様々な方向に向かって行き来して、ごった返していた。
親父さんは、雇ってくれた、工事会社の親方さんと改札口を出たすぐの、売店の横で待ち合わせをしていた。手には紹介状を握りしめて、〇〇工事会社と大きく書いた札を持っているはずの親方さんを目で追っていた。
それまでの手紙のやり取りでは、親方さんは60近いが、がっしりした大きな人で、顔中髭を生やしているということだったから、かなり目立つはずだった。
大きな荷物を背中に背負っている初老の女衆。一張羅のコートをぎこちなく引きずっている田舎の老人。ねんねこにくるまって寝ている赤ん坊をあやしている、母親。上野駅は人生を送る場所。人生を迎える場所。
そんなことをぼうっと考えていると、向こうから、ひときわ大きな男が人混みをかき分けてくるのが目に飛び込んできた。
間違いない、絵に描いたような、作業着と、髭面が語っていた。髭面は親父さんを見つけると、満面の笑みに変わり、意外に優しい顔になった。
お互いに深々と何度も頭を下げて挨拶しながら、駅前に停めてあったライトバンに二つの巨体を押し込めて、飯場に向かった。
親父さんは、初めて出稼ぎ労働者として東京に来たので、かなり緊張していた。
そんな姿を見て、親方さんは夕飯をご馳走してくれて、ビールまで飲ませてくれたという。
飯場は代々木公園の近くだったが、それはもう酷い掘っ建て小屋のようで、プレハブの建物にトタン屋根がかろうじて乗っかっている感じだった。
親方さんは二階に案内してくれた。一階は事務所と食堂らしい。親方さんが先に靴を脱いで、ガラガラと引き戸を滑らせると、10人くらいはいると思われる、厳つい男たちが、だだっ広いタバコの焼け焦げがいくつもある畳の上に各々自由に寝そべっていたり、胡座をかいて座ったりしていた。
驚いたことにかれらは一糸まとわぬ全裸であった。
歳は若い奴は30代半ばくらい、歳上でも、50歳くらいだろうか?
体格は誰もが骨太で、筋肉がかなり付いており、手足が短い柔道体型と言えた。
つるつるした、滑らかな肌のやつもいれば、全身剛毛でゴリラの方が近いと思えるようなやつもいる。
共通点と言えば、もろに動物の雄を感じさせることくらいか。
いずれに、全裸の男達が、共同生活している姿はある意味壮観だったに違いない。
作業員の一人が挨拶した。
本来なら今日は歓迎会なんだが、もう遅くなってしまったし、改めて別の日にやりますから、ごめんなさい。
親父さんも自己紹介を済ませて、その日は明日の朝が早いということで、ひとまず休むことになった。
しかし、夜中に小便に行きたくなり、仲間を起こさないように静かに起きようとしたとき、親父さんは見たのだ。
部屋の隅で、親方らしい人物の上に何人かが重なるようにして、うごめいている影を。しかも影の塊からは、ああっ、とか、いいぞとか、たまんねえとか、喘ぐ声がしていた。
それまで田舎暮らしだった親父さんにも、おおよその察しはついた。
なるほど、出稼ぎにきた逞しい肉体の男達ならその性欲も凄まじいものだろう。男同士の性行為なぞ、当たり前だ。
仕送りに精一杯で、トルコ風呂で女を買うような金はないだろうしな。
修平さんとの交情の経験もある親父さんとしてみれば、できれば、あの男臭い、親方のちんぽを味わってみたかったが、とにかく長旅で疲れていたのだろう、知らぬ間にぐっすり眠ってしまったのだ。
14
「それが、彼らとの最初の出会いだ。まあ、この話はまた別の機会にしてやるべ。」
「その次の日なんだ。修平が交通事故に遭って病院さ担ぎ込まれたって、電話が入ったのは」
親父さんは、東京に来て、まさにとんぼ返りで、山形に戻った。タクシーを飛ばして病院に着いたときには、もう修平は旅立っていたそうだ。
親父さんは、しばらく山形にいたが、49日が過ぎるとまた、東京の飯場に戻った。
「なして戻ったんだ? もう働く理由は無いだろうに」
俺は不思議に思って尋ねた。
「そうだなあ、まんず、修平のために何かしてないとおかしくなりそうだったんだな。それと、親方さんの言葉だな。あの言葉で、俺はまだまだ生きていかねばならねえと決心して、東京で働くことさ選んだんだ」
修平さんと暮らした故郷にはなんとも居たたまれなく東京には戻ったものの、親父さんはもう働く気力を無くしていたらしい。
毎日新しくなっていく、東京の街並みをぼうっと見ているだけで、工事現場にいても全く力が入らなかった。
そんな親父さんを見て、仲間たちは心配して慰めたりしてくれたが、もはや、残りの人生などどうでもよくなっていた。
そんなとき、ついに見かねた親方さんに呼び出されたのだ。
仲間たちが現場に行った後、親方さんは親父さんに飯場に残るようにと言った。
二人きりになった畳の上で、親方さんはいきなり作業着をすべて脱ぎ捨て、全裸になった。そして、親父さんにも裸になれと命令した。
その口調は非常に恐ろしく、威厳があり、何か逆らえない重さがあった。親父さんは、何事が始まるのか訳もわからないまま、ぼうっとしているうちに、親方さんにすっかり脱がされてしまっていた。
生まれたままの姿で、男臭い二人の中年が、ちんぽも金玉も見せ合って向かいあった。
「親父さんよ、今から言うことや、やることは俺が言うことでも、俺が勝手にやることでもない。お前さんの息子さんが言うはずのことだ。息子さんがやるはずのことだ。分かったな」
親方さんは真剣な眼差しだ。
生気を失っている親父さんの顔をじっと見つめた。
「親父さんよ、親父さんは俺が上野に迎えに行った最初のときに言ったよな。息子のためにもう一肌脱いで頑張って稼ぐって。あれは嘘だったのか? 息子さんがいなくなったら、男の言った言葉は嘘になるのか? 男と男が一度約束したことは、何が起ころうとも破っちゃならねえ。今こそ汗水流して働いてる姿を、息子さんは見たいんじゃないのか? 目的は学費を稼ぐためじゃなくても、いいじゃねえか、ただひたすら、男の働く姿を見せることが、息子さんへの何よりの供養だ」
「父ちゃん、父ちゃんの裸、かっこいいよ、こんなにかっこいい身体の父ちゃんが自慢だ。その男らしい身体で、働いている姿はもっとかっこいいだろうなあ、汗たくさんかいて、裸になって、泥まみれになって、筋肉を動かしている父ちゃん。最高の男だよ、てな」
親父さんの目の前にいるのは、もはや、親方さんではなかった。
その修平の声としか思えない言葉に、親父さんは涙があふれて、畳にぼたぼたと溢れることも厭わず、大声で泣いた。
「修平、父ちゃんを見ていてくれたのか」
親方さんは畳に突っ伏した親父さんを抱き起こして、ありったけの力を込めて抱きしめた。
その肌の温もりが修平の裸にしか思えなかった。毎晩、二人で、こうして素っ裸で抱き合っていたことを思い出す。
親方さんの肌の感触、親方さんの手の動き、親方さんの体臭までもが、そっくり修平のそれと全く同じに感じられる。
まるで、親方さんの身体に修平が乗り移ったかのように、言うこと、すること全てが亡くなった修平のものだと思えてしまう。
親方さんは優しく親父さんの頭を撫でて、身体全体を包み込んだ。親父さんの口に接吻をし、指は下半身をまさぐった。
ちんぽや金玉を撫でたり、乳首を摘んだり、脇腹を滑らしたりする指の動きは、完全に修平の愛し方と一緒だった。二人はぴったりと身体を密着させて、畳に倒れ込んだ。
首筋から、けつの穴まで、いたるところに親方の舌が這い回り、親父さんを喜ばせた。親父さんも修平の感じた箇所を丁寧に繰り返し愛撫した。
親方はとてつもなく巨大な男根の持ち主で、そのシンボルが飯場の連中の慰めになっていた。
今、その巨根は修平自身となって、喜びの涙を流し始めた。さらに親父さんは自分のちんぽを親方の口の中にねじ込み、真反対の体勢になってお互いの雄のシンボルをしゃぶりあいやすいように動いた。
じゅるじゅると唾液を垂らしながら、うまそうに男をしゃぶり続けた。
知らず知らずに親父さんは
「修平、気持ちいいが? いいべ、俺も気持ちいいからな、安心してけろ」
と、いつしか亡くなった息子さんの名前を呼んでいた。
15
何時間くらい、盛っていたのだろう?
気がつくと、辺りは真っ暗になっていた、暗がりの中でも、お互いの雄の身体を堪能していたことになる。
突然、ダンダンと階段を上ってくる騒がしい音が聞こえ、親子のまぐわいの映像が切れた。親父さんは慌てて、身体を離そうとしたが、親方はきつく抱きしめて、離そうとはしなかった。
「いいんだ、連中は構わないんだから」
そう言うと、親方は何もなかったかのように、引き続き親父さんの身体を舐め回しながら、股間に顔を埋めて、再び親父さんのちんぽをいやらしい音をわざと立てながらしゃぶりついた。
同時に戸が開いて、連中がなだれ込んだ。
部屋の真ん中で、親方にちんぽをしゃぶられている姿が丸見えだった。
よがりあっている二人の中年男。
だが、意外にも、飯場の猛者たちはいつものように作業着を脱ぎ、全裸になると、普通のことのように黙って、親父さん達の周りに胡座をかいて、車座に座る。
いやでも、彼等の股間にぶら下がっているものが目に飛び込んできた。
それは十数本のいきり立った固い木刀のようだった。湯気が立つような熱い血潮さえ感じられる。雄の群れ、群れ、群れ。
そして、ごろごろと固まりながら連なる玉、玉、玉。
一斉に彼等の陰毛から男の淫らな臭いが襲ってきた。
「なるほど、この飯場では、全裸になるのが習わしというのは・・・」
考えていると、親方は全員に呼びかけた。
「みんなで、いつものように、俺の身体を堪能していいぞ。ただし、今日はみんながずっと待っていた、親父さんを中心に喜ばしてやってほしい。みんなで慰めてやれ」
その言葉を聞いて、わあっという歓声が上がった。ぞろぞろと円の中心に向かって、雄の魔群が這い寄ってくる。
男盛りの塊が性欲の臭いをぷんぷんさせて、親父さんを、親方をてんでに触りまくる。手や指だけなはずはなく、舌を使い、自身のちんぽを使い、異様な大愛撫が開始された。
「毎晩のように」
乳首を舐めさせながら、親方は説明した。
「この飯場は、男達のセックスが繰り広げられているのだよ」
やはり、初めてここにきたときの夜の出来事はそうだったのだ。
親方は親父さんの乳首をコリコリといじりながら、話し出した。
一方、親父さんのちんぽには三人のガタイのよい連中が群がり、亀頭から、根本、玉にわたり分担を決めてちろちろ舐め始めた。男達の身体を知り尽くしたようなテクニックに思わず声が大きくなる。
「どうだね、こいつらの技はなかなかすごいだろ? 俺が時間をかけて教え込んだからな、ちんぽの色、艶、形を見ただけで、どこが感じるか分かるようになったよ。親父さんのは太くて、くびれ方がはっきりしてるから、鰓の下から、裏スジが弱いはずだ」
ずばり、弱いところを見抜かれて、驚く親父さん。
「親父さんは金玉の裏も好きなはずだ。だれか、舐めてやれ」
さらに見抜かれて肝心なところを突かれた。
大きく脚を広げられ、みんなの前で大人が恥ずかしい格好をさせられた上、竿と玉を舐められている姿が露わになる。
「出稼ぎに来た親父達ってな、みんな、それぞれ問題を抱えているもんだ」
親方は出稼ぎが急速に進んで、高度成長期の日本を支えていることに対して、暗澹たる思いがあると言った。
親方のちんぽはやけにごつごつしていると感じたが、やはり真珠が多数埋め込まれていた。親方も何人かに自分の玉と竿をしゃぶるように言うと、股を広げて、されるがままにした。乳首は自分でつまみながら大きく固く育てるのだという。
お互いを愛撫させながら、親方と親父さんは話を続けた。
「出稼ぎが儲かるから、みんな東京に来たがるが、農業と違って手間ひまがかかり、時間を必要とせずに、日払い、週払いで金が入るから、都合が良いんだよ。しかし、その分農業以上に重労働だと分かって、みんな驚くんだ。重たい資材を運ぶのは中年にはきつく、道路を掘り返すのは夜通しだ。高いところに足場を組まなきゃならない、転落して命を落とす者も大勢だ。それほど危険で辛い割には賃金が安い。しかも、家族と離れ離れで寂しくて、精神的にも安らぎがなく、みんな参ってしまうんだ。さらに、大都会だから、隣近所が助けてくれるわけでもないし、友達もいないから愚痴も言えない」
「そんな生活が続いてみろ、やはり人間、弱いものだよ。はけ口として、競馬、競輪、パチンコと賭け事に稼いだ金をつぎ込む。女が出来て夢中になり、やっぱりつぎ込んで騙される。ヤクザに誘われて、そっちの道に入る者もいる。酒浸りになりアル中に転落したやつ、金がなくなり、窃盗犯になったやつ。まあ、きりがないね」
「稼いだ金を、爪に火をともすように貯めて、仕送りを欠かさずに続けている男なんか、本当にごく一部でな。実際は大切なものを東京でどんどん無くしていくんだ」
「そんな親父達を何人も何十人も見てきて、何かな、切なくなってな。俺もヤクザみたいなことやって、純朴で人のいい親父達から金をだまし取っていたんだよ」
「せめて、罪滅ぼししようと、工事会社を作ったんだ。そして、出稼ぎに来た親父さんが身を滅ぼさないような、家族的な組を立ち上げた」
「まず、稼いだ金は、ひとまず、俺が預かり、俺が各家庭に仕送りする仕組みにした。最初は文句だらけだったが、確実に送り続けると、田舎の家族からも信用されて、感謝されるようになった。次に食費は全てこちらで持つようにした。腹一杯になるよう、結構いい食事を提供したよ。酒もビール程度なら自由に飲めるようにしたし、タバコも週に一箱なら無料で提供した。田舎にかけられるように、無料で電話を使えるようにもした」
「重労働に耐えられるだけのガタイのよい、逞しい肉体の男だけ選ぶようにしたら、怪我や病気はなくなった。問題は、男の性欲だった。女を買ったり、女に貢いだりするのを何とかしなきゃと思ってな」
「それなら、女に興味がなくなり、母ちゃんがいなくても、性欲が満たされ、さらに寂しい思いをしなくてもいい方法を考えたさ」
「男の味をたっぷりおしえこむんだ」
「最初は抵抗する者もいたが、俺が最初に快楽に目覚めさせたやつと毎晩のようにみんなの前で男同士のセックスを見せつけてやると、健康な男はすぐに興奮するなあ。瞬く間にちんぽ膨らませて、参加するようになった」
「それ以来、女よりずっと気持ちいいし、仲良くなるにつれ、みんなが家族みたいになったよ。問題は、田舎に帰ったら母ちゃんと元のようにできるかどうかだ」
ははは、と笑いながら、親方は別のやつを呼んで、大きくなった乳首を舐めさせた・・・。
「若い連中に乳首を舐めさせる行為をわざと見せつけられてなあ。俺は親方の優しさを感じたのう。せめて、男同士の交わりを味わって、少しでも辛さを紛らわしてもらうためにみんなと打ち合わせをしてくれてたことも、手に取るように分かってなあ」
飯場での出来事を語った親父さんは俺の太い首にざらざらとした無精髭を擦り付けるように、強く押し付けて、身体を震わせた。
声を押し殺し、何かを必死に我慢していることが、熱い息づかいでも分かった。
俺も、親父さんの背中に両腕を回して、包み込むような姿勢になった。もっとも、とてもじゃないが両腕が回らないくらい大きな体躯だったが、それでも俺の気持ちは両腕を通して背中で感じてくれたと思う。