親子
セオリオがアレクの部屋を訪れ、ボルグが大石の上で雑念を振り払おうとZAZENの行を始めたのとほぼ同じ頃か、ベルの部屋のドアが荒々しくノックされた。
「いるか、ベル?」
「あ、バーン副団長……」
「入るぞ」
ベルの返事を待たず、ずかずかと入室したのは副団長のバーンであった。壮年の槍遣いは団員用のベストも脱ぎ、逞しくも汗まみれの半裸の姿で荒い息を吐いている。
バーンの全身から漂う枯れ草の匂いのような体臭が、普段の倍ほどもの強さでベルを襲った。
ドアの前の大男を無言で招き入れるベルの目はすでに情欲に燃え上がり、腰布の前は大きく盛り上がっている。
「今日の俺は、もう盛りがついてしまってる。アレクの奴の飯の後からだから、お前もきっとそうだろ。お前の話だと、俺から1本取ってからってことだったが、すまんが、俺の方が我慢が出来そうに無い。意味は、分かるな?」
「はい、副団長……。俺も、その、飯の後から滾ってしまって……」
「まったくアレクの奴、俺等にナニ喰わせたんだか……。だが、俺は俺で、ちと感謝してるんだが……」
「俺もです、バーン副団長……」
互いの腰布は、もはやその下の内包物を隠せぬほどに押し上げられ、バーンのそれにいたっては表面にじっくりと濡れた染みすら浮かびはじめていた。
ベルもまた、若い肉体から発散される熱がそのまま室温へと転じるかのように汗ばみ、未だ傷1つない滑らかな肌を情欲に熱く火照らせている。
「いいんだな、今日で?」
「はい、俺も、もう、たまりません。それでも今年中には、副団長からなんとしても1本は奪います」
「ああ、それはそれ、これはこれだな。そっちも楽しみにしてるぞ……」
歴戦の勇者と、それに憧れる若者。
実の父親と、実の息子。
その2人の関係は両立し、互いに矛盾は感じていないようだ。
「脱げ、ベル。お前の身体を、全部見せてみろ」
「はい、副団長」
ベルが意を決したように、腰布を外す。
肉棒は天を射すかのように勃ち上がり、剥け上がった亀頭はすでに先端にぷっくりとした露を浮かべていた。
「さすがに俺の息子だ。その年で立派なもんだ。身体もよく鍛えているな。鍛錬を欠かしてないのが、よく分かる……」
バーンのかすれた声は、息子の逸物を情欲に血走った瞳で見つめながらのものだ。
その視線と声が、いっそうベルの官能を刺激していく。
「副団長に見られて……、俺、それだけで、イキそうです……」
「まだ早いぞ。夜は長いんだ。じっくり楽しもう……。そして……」
「そして……?」
わずかばかりに躊躇うバーン。
「2人だけのときは、親父と呼べ、ベル……」
「はい、副団長……、あ、ああ、親父……」
親子として呼び交わす2人。
その途端にベルの逸物が上下にびくびくと震えてしまう。
「すげえ……。親父、親父、オヤジ……」
「ベル、ベル……。ああ、この日を待ちわびてたぞ……」
「俺もだ、親父……」
己の腰布を剥ぎ取り、ベルの身体を抱きしめるバーン。
全身を覆う体毛が見事なバーンと、その逞しい体躯を滑らかな肌で覆われたベル。対照的な2人の裸体が抱き合う姿は、その場を覗くものの劣情すら昂ぶらせてしまいそうだ。
ごりごりとぶつかる2人の肉棒が、互いの雄としての存在を否が応にも感じさせてしまう。
「俺、今日、親父に抱かれるんだな……」
「ああ、今日、俺は、実の息子のお前を抱く。お前の尻に、俺の肉棒を入れ、中で俺の汁を出したい。お前の尻も、顔も、身体も、俺の汁まみれにしたい」
「親父、親父、俺、ずっと親父に憧れてて、鍛えて、訓練して、騎士団に入って……。ようやくようやく……」
「ああ、分かってた。お前が俺に憧れてくれていたのは、聞いていた。分かっていた。いつかはこうなるとは思っていたが、まさかそれが今日になるとは思わなかったがな」
「親父、いいのか、俺で? こんな若造の俺が、親父に抱かれる資格、あるのか?」
「お前は騎士団に入る実力があって認められたんだ。俺がそれ以上の理由を何か必要とするか? ああ? お前はもうすでに立派な『男』だ。これまでの鍛錬の成果、これまでのお前の思いを、全部俺にぶつけろ。全部、俺が受け止めてやる」
「ああ、親父、親父……」
バーンの厚い胸、茂った胸毛の合間にその顔を埋めるベル。
ベルの首に回したバーンの腕が、その頭を少しだけ持ち上げる。
「キス、するぞ」
黙って目を閉じるベル。
ほぼ同じ上背の2人ではあったが、自然とバーンが覆い被さるように、ベルの若い唇をむさぼる。
「あっ、あっ、俺っ……。親父と、親父とキスしてる……」
「ああ、そうだ……。ベル、お前は実の父親と、キスをして、唾液を飲み合うんだ……」
溜めた唾液がベルの口中へと流し込まれる。
一滴も零すまいと、飲み干すベルの喉仏が上下に揺れる。
「へへ、親父の唾液、ちょっと苦いけど、美味いよ……」
「後から俺の雄汁もたっぷり飲ませるから、そっちも存分に味わえ」
「ああ、親父の、しゃぶりたい……」
「俺も、お前のをしゃぶりたい。ベッドに行くぞ、ベル」
2人の裸体がもつれ合いながら、どさっとした音を響かせて寝台へと倒れ込む。
まずは父親のものをと、ベルが二抱えもありそうなバーンの太股の間にその身体を入れ込んだ。
「親父のデカい……」
「まあ、分団の中じゃデカい方かな……。それでも獣人連中にはとても敵わん奴等がぞろぞろいるが……。さあ、しゃぶってくれ、ベル……」
「全部は入んないけど、ごめん」
「俺のを全部飲み込むのは、うちじゃボルグが仰向けになってぐらいしか出来ん、気にするな」
「団長と親父と、それだけでも、俺、興奮する……」
「最近はご無沙汰だが、あいつとはケツもたっぷりやりあってきたんだ。いつかはお前も入れて、いや、全員で楽しもうぜ」
「うん……。今日はまず、親父のだな……」
まずは匂いを堪能したいのか、猛々しくそそり勃ったバーンの裏筋に、鼻先をこすりつけるベル。
玉と竿の付け根に舌を這わせ、滲み出る雄のエキスを存分に味わう。
「焦らさないでくれ。ベル……」
頭上から聞こえるバーンの切ない喘ぎに、どこか勝ち誇ったような笑みさえ浮かべ、ベルの唇がいよいよ先端へと向かった。
「うっ、あっ……」
べろりと鈴口を舐め上げた舌で、太棹に流れ落ちる先汁をこそげ取るようにして舐めとるベル。
太い血管が浮かび、見た目にも異様なほどのゴツゴツとしたバーンの肉茎を、ねろねろとしゃぶり上げていく。
舌先はそのまま剛毛に覆われたふぐりへと進み、片方だけで口中を埋め尽くすほどの睾丸を、じゅるりと吸い上げた。
「うおっ、玉責めっ、気持ちいいぞっ……。それ、ずんずん、効くな……」
「親父のふぐり、すげえデカいし、すげえ美味い……」
口の中で転がされる玉と、同時に手のひらで扱き上げられる肉棒と。
バーンの巨根と巨大な双玉が、若いベルの手と口で翻弄されていく。
「直に、直にしゃぶってくれ、ベル……」
そのテクニックに我慢が効かなくなったバーンが、実の息子に懇願する。
じゅるっ、じゅぱっ。
じゅぼっ、じゅぼっ。
ついにその舌と唇が、バーンの逸物を呑み込んだ。
「おっ、おおっ、いいぞっ、いいぞっ、ベルっ! もっと、もっと、しゃぶってくれっ!!」
バーンの下腹部に顔を埋めたベル。
その口は暗紫色に熟した亀頭を、舌と唇、さらには歯先までを使いながら責め立てていく。その手は太棹の根元を握り、扱き上げ、でっぷりと重量感露わなふぐりをゴリゴリと揉みあげる。
同性であるがゆえに知り尽くした性感帯を責め上げるその動きは、性豪で鳴らすバーンですらも悦楽の境地へと誘うようだ。
「待て、このままだとイきそうだ。交代するぞ」
「一度や二度イったぐらいじゃ、どうせ親父もおさまらないだろうに」
「そういうな、1発目はお前のケツでって決めてるんだ」
「俺は親父にヤられながらイきたい……。ケツの前に、しっかりしゃぶって、イく寸前にしてくれよ」
「ああ、任せとけ。俺の口も、かなり評判いいんだぞ」
親子が体勢を入れ替える。
横たわったベルの股間を見下ろすバーンの目は、好色の中にどこか賞賛の輝きさえ見て取れるようだ。
それほどまでに若い肉体は、膂力と生命力に溢れたオーラを放っていた。
「あっ、あっ、親父の尺八っ、すげえっ、すげえっ!」
両手を短く刈り込まれたバーンの頭に当て、声を上げるベル。
じゅるじゅるとわざと音を立て、実の息子の耳すら侵そうかと言わんばかりのバーンのテクニックが、ベルの肉体を蹂躙する。
唇と口蓋、さらには喉奥と3カ所にわたっての締め上げと、その間に休まずうごめき続ける舌と。
ざらついた表面と強い弾力を伴った舌先が裏筋をねぶり上げていた次の瞬間、先走りの流れ出す鈴口をずりずりと縦に刺激する。針で突けば破裂しそうな亀頭冠が、ぬるりぬるりと責め立てられていく。
流れ落ちる唾液と先走りが混じり合えば、ふてぶてしいほどに膨れ上がったふぐりを伝い、ベルの尻穴までもぐっしょりと濡らしていく。
いつの間にかバーンの太い指が、ぐちょぐちょと音を立て、その穴へと突き入れられていた。
全長を捉えたまま、一度も口中から逃さぬままの吸引と舐め上げ。じっくりと慣らされていく尻穴。
実の父親によるその責めは、ベルの若い肉体に一時の休息の暇すら与えない。
「ダメだっ、親父っ! このままじゃ、このままじゃイッちまうっ!」
このまま出してもいいんだぞ、さもそう告げるかのようにバーンがベルの腰を軽く叩く。
「俺っ、まだっ、まだイきたく無いっ! 今日は、今日の1発目はっ! 親父にっ、親父に掘られながらっ、イきたいんだっ!!」
その声を聞いたバーンが上体を起こした。
ぐっとベルの両脚を持ち上げ、その尻肉を露わにする。
「いいんだな、ベル?」
「挿れてくれっ、親父っ!! 親父のチンポっ、俺のケツに、挿れてくれっ!!」
バーンの太い指先でほぐされたベルの尻穴は唾液と先走りをまぶされ、てらてらとしたぬめりで父親の逸物を誘っていた。
臍を叩かんとする己の肉棒をぐっと押し下げ、バーンがその先端の狙いを定める。
「息を吐け。口を開けて、痛みを逃がせ」
並外れた己の逸物が、初めてのものにどれほどの圧を与えるかは、その余りある経験から容易に推測できるのであろう。
バーンが声をかけると同時に、分厚い腰をずんと前に突き出した。
「あがっ、あっ、あっ、ああああっ」
「なるべく緩めろ。だんだん慣れるはずだっ!」
半分ほどを入れたまま、ピタリと動きを止めるバーン。
ベルの尻が己のものと馴染むまでのわずかな時間を図っている。
「あっ、あっ、すげえっ、親父のがっ、親父のがっ!」
「ああ、挿入っているぞ、ベル! 俺のが、おまえの親父のチンポが、おまえの中に、挿入ってるぞっ!!」
「すげっ、すげっ、すげえっ」
「奥まで挿れるぞっ!!」
じりじりと進むバーンの腰を、ベルの若い肉が受け止めていく。
「あっ、あっ、ああっ!!」
「全部、全部挿入ったぞ、ベル。触ってみろ!」
「すげえっ、親父のがっ、ケツに、俺のケツに全部挿入ってるっ!!」
ベルに覆い被さるバーンが、その唇を再び奪う。
「動かすぞ、いいか、ベル?」
バーンの耳元での囁きに、うなずきを返すベル。
その手はバーンの広い背中に抱きつき、全身で感じるずっしりとした重さをすら快感として味わっている。
「ああっ、あっ、あっ、あっ、あっ……」
「いいぞっ、ベルっ! お前のケツっ、いいぞっ!!」
日頃のバーンであれば、己の快感よりもまずは相手を充分に感じさせることに時間をかけるのが、その色事の常態であった。
知らず知らず口にした獣人達の精液は、そのような思いすら打ち砕くほどの情欲の昂ぶりをもたらしている。
そしてそのことを不思議に思わぬ、いや、思えぬことそれこそが、獣人との直接的な肉塊接触では人族が敵わぬことの証左なのだ。
「おっ、おおっ、イきそうだっ、ベルっ!! いいか? お前のケツでっ、中でっ、中でイっていいかっ?」
「親父っ、イけっ、イってくれっ! 俺の尻にっ、親父の、親父の汁っ、全部くれっ!!」
親子2人が汗だくとなり、互いの目を見つめ合う。
2人の情欲と情動が一致した、その瞬間だった。
「はい、ここまでにしときましょうか。お二人とも、イくことは出来ませんよ」
途端に2人の鼻の奥を強烈な獣臭と性臭が襲う。
2人の意思が、思考が、どろりと溶ける。
「あがあっ、な、なんだっ!! イ、イケないっ?!」
「だ、だれだっ、お前っ?!」
いつの間にか寝台の横に立ち2人の額に両手の人差し指を当てていたのは、ボルグに気付かれずに忍び寄っていた、あの『魔法使い』の牛獣人の姿であった。