雄志社大学プロレス同好会 秘密の興行

その8

 

その8 控え室にて

 

 今度のこの『興行』、土日を使っての日程で、その週の入り前の日曜日、百道先輩からの厳命が下ったんだ。

 

「明日の月曜からは勃起薬も飲まなくていい。次に飲むのは興行当日だ。

 練習も筋トレと流れの確認と流しでいく。

 そしてこれが一番大事なことなんだが、水曜日からは射精禁止だ。お前らも、汁、溜めとけよ。

 これまで毎日、散々イってきてるんで突然のストップはキツいと思うが、当日溜め込んだのをぶっ放せると思って我慢しとけ。

 夢精はさすがに仕方ないが、自分でイくのももちろん無しだぞ。

 ああ、扱いたりしゃぶったりでおっ勃てるのは構わんが、とにかく出すなってことだ」

 

 この1ヶ月ぐらい、一日おきに薬飲んで(最長36時間とか効く奴)、もう起きてるときはずっとおっ勃ってる感じになってたから、急に薬切れたら反動くるのかな、とかもちょろっと思ったんだけど。

 これが不思議なことに、薬止めてもぜんぜん効果が切れた感じが無く、水木金と、やっぱり3人揃うとすぐにおっ勃つ状態で。

 先輩曰く『勃ち慣れて来てんだろ』ってのが、分かったようで分かんなくて。

 それでもこれまでの『練習』で、『イかせるときの扱き方しゃぶり方』『イかせないときの扱き方しゃぶり方』をやってきたのが、スゲえ役に立ったなって思ったところ。

 

 射精禁止がかかる水曜からは、相互監視の意味もあって練習場で合宿するぞって言われたんだ。

 ただ、俺自身が先輩や中洲君のカラダが自由に手を伸ばせるとこにあったら、我慢できるかなあって思ってさ。

 先輩に直接尋ねることにした。

 

「3人で共同生活って、かえってムラついて、ついしゃぶり合ったりしちまいませんかね?

 そして、2人が寝るときも側にいるかと思うと、俺、なんかドキドキして、夜、眠れるのかなあって」

 

 中洲君もうんうん頷いてたから、同じ気持ちだったんだと思う。

 

「ん? だから扱き合いしゃぶり合いは構わんって言ったろ。

 なに、これが1ヶ月とかならキツいだろうが、せいぜい数日で、溜めた興行当日には何発でも出せると思うと、けっこう我慢は効くもんだぜ。

 そこは経験者の俺を信じとけ。

 それに1人で天井見ながら色々考えちまうよりも、横に人がいた方がよく眠れないか?」

 

 俺も中洲君も、『へっ?!』ってなった。

 どうも先輩の話だと、これが『色気こけるかこけないか』のライン上の相手だと、気になって眠れないかもだけど、もう『色気あるのが前提』の仲なら、かえって横に誰かいた方が眠りやすいと思うがなって。

 

 さっきは『へっ?!』だった俺と中洲君、話聞いたら『へーっ!』って感じになったんだよな。

 

 で、確かにエアコン一定効かして&隣に先輩や中洲君いたら、なんか安心感あってぐっすり寝てたんだよ、みんな。

 不思議なこともあるもんだ、って思いながら、だったらそれぞれアパート引き払って練習場で一緒に住むのもありなんじゃ、とかこっそり考えた俺だったけど。

 

 昼間はもう調整に入ってたけど、さっきも言った通りでちんぽはみんな勃ってるし。

 先輩の言う通りで軽くしゃぶり合いや扱き合いしながら、寸止めギリギリの2歩手前、ぐらいで止めて楽しむのも、案外『よく』ってさ。

 なんかこういうのやってると、自分のちんぽと玉が前より一回りぐらいデカくなった気がしてるんは、俺だけなのかなあ。

 

 そうこうして迎えた当日、昼前には勃起薬も飲んで準備万端。

 OBが回してくれたタクシーで、明友大学プロレス愛好会のリング道場に向かったんだ。

 

 

 カラダの慣らしもあるし、リングの準備も手伝いたいから午前中早めに着いたけど、OBの先輩も何人か来てて、百道先輩ちょっと慌ててた。

 先輩は怪我(だいぶ治っては来てるけど)のせいでセコンドなので、試合の前半の流れは俺と中洲君でチェック。

 これ、お客さん来る前にやっとかないといけないから、まず先に済ませろって言われて。

 ブック(あ、流れとか進行のことね)の確認しつつ、リング上でそれぞれの動き確認したりして。

 百道先輩も明友の3回生とOB(運営事務局の人達だよな、やっぱり)との打合せ終えて合流。

 特に後半の魅せ場なる個別への責めについては、俺には明友の3回生の東比恵(ひがしひえ)さんが担当に。

 

「上川端君、金玉責められるだけでイケるんだって? スゲえそれ、うらやましいなあ」

 

 あ、この人もやっぱり百道先輩と同じ思考回路してるんだ。

 

「俺や百道が参加した一昨年は、あんまりそういう『華』のあるのがいなくてさ。もちろん俺たちも頑張ったけど、やっぱそういう『一芸』みたいなのがあると、ブックも組みやすくなるし、かなり色々盛らせてもらったよ」

 

 ああ、明友のブッカー(ブック=流れを作る人のことね)、東比恵さんなんだ。

 話聞いてたら百道先輩の幼馴染みだってことで、なんかびっくり&そういうのもいいなあって思ったところ。

 たぶん、小坊んときから一緒にプロレスごっことかして遊んでたんだろうな。

 

 うちら雄志社の3人は筋肉+脂肪って感じでのむっちり感が目立つけど、明友の人達はがっちりって感じかな。

 こういうのはそれぞれで、身体作りの方針とかが違ってるんだろうなとは思う。

 東比恵さん、上背もあってガタイも良くて、俺とかからは『カッコいい』人なんだけど、まあ顔の芋っぽさは俺たちとどっこいどっこいな気も。

 あ、これはさすがに俺が言ったって知られると怒られそうだから、内緒な、絶対。

 

「叩きや電気あんまは、中洲君は亀頭寄りに、上川端君は玉寄りにかけてけばいいとして、握り潰しは下からのクロー系と前からのと、どっちがいいかな?」

 

 いや、どっちが『いい』とかじゃ無いんだけど。

 

「そうっスね。東比恵先輩が腕キツくなければ、後ろから尻の間に手を通してのわしづかみとかが、お客さんにも見えやすくていいんじゃ無いかと思ってて」

「ああ、そりゃいいな。ちんぽはなるべく隠したく無いので、後ろからなら全部見えるし、乳首も同時に責められる。

 それと、例えば、ロープ拘束した首を無理やりねじ曲げて、俺の唾液飲ませたりとかも大丈夫かい?」

 

 うわ、お願いしますっ! って脳天気に言いそうになったんだけど、なんか百道先輩に悪い気が一瞬したのはなんだったんだろう。

 もちろん思い直して、すぐに返事したけど。

 

「ぜんぜん大丈夫ですっ! 俺の方からお願いしたいぐらいです!」

「はは、お願いされるぐらいならは良かったな。じゃ、唾飲ませも組み込もう。

 おい、シゲ! 後でブックに色々追加しとくから、見直しといてくれ!」

「ほーい、オッケー! ま、お前らの動きに付いてくのが俺の役目だからな。臨機応変にやってくよ!」

 

 東比恵さんが声かけたのは、明友の同じ3回生の箕島重明(みのしましげあき)さん。午後からの本番ではリングアナやってもらう人。

 箕島さん、明友の中では『シゲ』って呼ばれてるんだな。

 うちはあだ名呼びはあんまりしないから、そういうのも新鮮な感じ。

 

 俺、中洲君、百道先輩それぞれが担当責め役の人との打合せ終えて、今度は後半の流れ確認。

 特に俺達がイカされてグタっとなる→ヒール側が浮かれる→俺達が3人でヒールをやっつけてフォールに持ち込む、この流れはもたもたすると絶対ブーイング来るので、けっこう細かく打ち合わせる。

 誰かが動く時点でこの2人はあっち向いててとか、リング内での歩幅調節とか、それなりにやるんだぜ。

 このあたりは双方の息と試合勘が合致してこそ、いい『試合』になるんじゃないかな。

 

 午前中、割と早めに打合せ終わって、東比恵さんはブックの書き直し。

 明友のみんなと俺らで会場内の最終設営終えていった。

 

 昼飯はOBの人が(と言っても全体の運勢費から出てるんだろうけど)弁当取ってくれて、ワイワイ言いながらみんなで食べる。

 

 で、明友のロール割り確定分がこれ。

 

・ヒール2名 東比恵悟(3回生)

       赤坂稔(2回生)

・乱入ヒール 冷泉翔太(3回生)

・セコンド  小笹健吾(2回生)

・リングアナ 箕島重明(3回生)

 

 うちの面子は、もう分かってるよな。

 

・ベビー2名 上川端聡志(2回生)

       中洲宏明(2回生)

・セコンド  百道三六(3回生)

 

 ついでに学生から出せなかったレフェリーは、うち雄志社のOBから名乗り出てくれた人。

 100キロあるそうで、レスラー役の方がいいんじゃね? と思ったけど、経験者ゆえのリングアナとの流れに乗った審判&本人さんが『見られ好き』ってことで、最後の全員せんずりに参加したいがための応募なんだって。

 

・レフェリー 香椎謙吾(29才)

 

 最終的にリングに上がる、まあ最後に全裸になってせんずりショーに参加するのは、この明友5人、うちの雄志社3人、OB1人の合計9人になるってワケ。

 ホテルの個室の主役になる『後半戦』は、香椎さんはあくまでもOBとしての参加になるので、あくまで現役学生の8人になる。

 この8人で『後半戦』参加者のOB&有志46人を『相手』することに。

 興行そのものは49人が前半戦からの観客数。ホントはその全員後半戦にも参加したかったらしいけど、仕事とかでどうしても不参加になる人が3人いるんだって。

 

 午後1時。いよいよ開場の時間。

 学生以外での50人近く集まるってので、まあOBにガタイいい人が多いのは予想してたけど、なんかそうでない人達もみんないい身体してて、ちょっとびっくりで。

 かっちりした服着てる人はあんまりいなくて、けっこうみんな身軽な感じ。

 単純に猛暑ってのもあるけど、やっぱり後半、色々あるからな、この試合。

 

 後からちらっと聞いたのは、現役学生は学生同士かOBとの『練習』でほぼ最初に『男』を知る→当然その環境からは『ガタイのいい』男達との肉体関係が『心地良い』ものと認識され得る→よってその『仲間』となるべく己達もカラダを鍛えるべし。

 って流れになってるんだって。

 まあ、そう言われると、確かに俺とか百道先輩のガタイや東比恵さん見て『カッコいい』とか思っちゃってるから、なるほどって思わんことも無い。

 

 で、入場整理と後から配布される画像や動画の受付とかは、全部OBの事務局の人がやってくれて、なんか直前はみんな手持ち無沙汰になった感じ。

 当然、空いた時間にはブック(試合の流れ)を何度も確認したりはしてたけど、それでもなんかこう、間が開くと気合いが抜けるっていうかさ。

 たぶん3回生の先輩達が一番そういう『気配』に敏感だったんだろうな。

 

「三六っ! 俺に一発、気合い入れてくれんか?」

「ああ、なんだよ悟(さとる)。俺がそういうの苦手だって、知ってるだろう?」

「だから頭下げて頼んでんじゃねえか!」

 

 なんか2人見てて、一瞬『この興行、アングルあったっけ?!』って混乱した俺。

 ああ、そっか、小さい頃から知り合いだったなってすぐに思い直したけど、知らなかったらマジにアングル案件だよな、これ。

 

 あ、『アングル』ってのは、試合そのものの流れを作る『ブック』と違っての『場外戦』みたいなもんかな。

 ほら、プロレスの団体や中のグループでの『抗争』とかある奴、あのあたり全般を指すって考えてもらうといいと思う。

 当然今回みたいな完全に『表』と切り離された奴に存在するはずは無いんだけど、普段だとそこらへんも考えてたりするからこっちも一瞬な。

 

「しっかたねえなあ……。で、ビンタ一発って感じでいいのか?」

「ああ、頼む。この間だと、ちと気持ちが浮いちまう」

「しゃーねーな。だったら、次は俺にも一発、頼むわ」

「……ああ、分かった。じゃ、頼む」

 

 もうみんなレッパンに着替えてて、明友の3人は黒い奴。俺ら2人は赤レッパン。

 古風な考えなんだろうけど、伝統みたいな感じでのヒール側が黒、ベビーフェイスが赤って奴やね。

 

 その黒のレッパン一丁の東比恵先輩、うちの百道先輩の目の前に仁王立ちしてんのが、凄く格好良くて。

 タッパも体重も両方ある人が鍛えてると、こんなにすごい身体になるんだって見本みたいな人。

 その人が両手を腰の後ろに回して、もうなんでもしてくれ状態でさ。

 俺達も明友の奴らも、クスリも効いてきててみんなレッパン盛り上げてんだけど、このシーン見てるだけで先走り出ちまう奴もきっといたと思う。

 つか、俺がまさにその中の1人だったし。

 

「悟っ、気合い入れろよっ!」

 

 百道先輩の声と、ビンタ張る派手な音がほとんど一緒になって聞こえた。

 順番で今度は百道先輩が東比恵さんからビンタ張られて。

 

 そうなると、他の連中も我も我もとなるのは当たり前だよな。

 普通だったら同じ同好会の先輩に気合い入れてもらうのが当たり前なんだろうけど、百道先輩と東比恵先輩が互いにやっちゃったから、なんか相手の先輩に気合い入れお願いすることになっちゃった。

 

「東比恵先輩っ、気合いお願いしますっ!」

「よおしっ、気合い入れていけっ!」

『バシッ!!!』

 

 て流れが、完全にリズム化した感じに。

 結局、顔揃えてる学生8人全員が先輩二人にビンタ喰らった。

 気合い入ったのはもちろんなんだけど、普段の『試合』も『全力で当たって全力で受ける』のがモットーの俺達だから、東比恵さんの一発、正直涙出ちまうほどの痛みではあったんだよな。