その8 最終日
あれからの3週間は、右城と左雨に取ってもあっと言う間に過ぎていった。
2週目の『入りの湯』の期間には、毎夜の『揉み療』は広間での全員が参加する乱交へとその役目を変え、最初の週であった『慣らしの湯』の期間には、舐められ、いじられ、せいぜい指でくじられる程度であったアナルを使っての、存分な交わりを学んだ2人である。
3週目の『猛りの湯』の期間においては、ある程度の肉体変容のラッシュも過ぎ去り、体重や体毛の強変化も落ち着いてきた時期だ。だからこそ、以前の倍ほどにも増量した互いの肉体や体毛を使っての、これまで経験の無いよう激しい情交が、宿のあちこち、1日のあちこちで繰り広げられていく。
右城や左雨にとって、それまでの生活では間近で見ることのなかったはずの、宿守りや北郷のピアスが装着された乳首、さらには四方や黄田、紫雲が装着している魔羅ピアスの刺激の仕方、楽しみ方を新たに知ることとなったのだ。
湯治28日間の最後の週、『修めの湯』の期間はすなわち、娑婆に降りた右城たちが己の変化した肉体と、その力強い勃起を制御するための様々な訓練の日々となった。
これまでの手と口、体毛と肛門など、皮膚と粘膜を主に利用した、ある意味『柔らかな』刺激では無く、ローションガーゼや歯ブラシなどを使った強い刺激を亀頭や乳首に与えることで、わずかな刺激では勃起が誘発されないような、自律訓練が行われたのであった。
いよいよ、明日は下山を迎えるというその日、酒に見立てた『魔剋湯』を飲んだ男たちは、アルコールの『酔い』にも似た酩酊気分を味わっている。
「左雨様、右城様。そして本郷様、西山様。ここ『金精の湯』におけるこの28日間、本当にお疲れ様でした。
いよいよ明日は皆さまが下山の日となりました。名残惜しくもありますが、今後は自由逗留での利用を宿守り一同、心よりお待ち申し上げております」
宿守りの長、荒熊内使用が、そのひげ面を赤く染めながら、最後の挨拶をする。
「四方さん、紫雲さん、宿守りの皆さん。本当に俺たちが、この左雨宗吉が、右城智也が、自由逗留を申し込んでいいのですか?」
当初のイニシアは右城の方が握っていたようであったが、2週目以降はやはり年齢が上である左雨の方の発言が先になることが多くなったようだ。
「そのことも何度もお伝えした通りでございますよ、左雨様、右城様。『慣らしの湯』の最終日のあなた様方からの告白で、私どもが抱いていたすべての疑問や不信は解消いたしました。
あの日以降は、私どもも、普段の選ばれし湯治のお客様として、なんら変わらない接し方をさせていただいたと思っております」
四方の言葉を受け、こちらも少し頬を赤らめている右城が答えた。
「四方さん、宿守りの皆さん。そして北郷さん、西山さん。私たちを許してくれて、そして認めてくれて、本当にありがとうございました。7日目以降、自分の身が軽くなった、秘密を抱えずに過ごす毎日がこんなに楽しいものだったかと、本当に思い直す日々でした。
私にとっては、この身体の変化を家族にどう説明しようか、との問題は残ってはいますが、ここでの28日間、ここで過ごした毎日に、本当に感謝をしています」
男たちから盛大な拍手が起こる。
この手の話題を何度も聞いてきたのか、紫雲が立ち上がり、右城の抱える悩みにも言及していく。
「右城様のように『これだけ短期間に変化してしまった肉体をどう周囲に説明しよう』とお悩みになる利用者の方は、毎回の湯治の際によくおられるのでございます。
私ども宿守りとしてはいささか身を守る発言になってしまうのではありますが、これまで私が経験してきたその後の身の処し方については、総論としては『案ずるよりも産むが易し』との諺通りであったかと記憶しております。
もちろん数日間は話題として拾われてしまうような変化変容ではございますが、人の記憶というものもけだし曖昧なもの。
一週間、十日と日が過ぎゆけば、ご家族も、周りの方々も不思議と『慣れてしまった』という事後の報告をたびたび聞くものでございました」
顔を見合わせる右城と左雨ではあったが、人の記憶、思い込みというものには商売柄多く接してきていた2人でもある。
紫雲の説明に、そういうものだろうな、という一定の安心感も得ることが出来たようだ。
「それでは、ここ『金精の湯』における28日間を過ごされた、左雨様、右城様、最後の身体計測をさせていただきます。褌を外されて、皆の前にお立ちください」
茶野の弁にて、左雨と右城が素っ裸になり皆の前へと歩を進める。
湯治前は幾分か痩せ型であった右城、中年太りの中にしっかりとした筋肉を秘めていた左雨の肉体も、かつての北郷や西山を同じく、宿守り達と遜色の無いまでに、そのバルクも、体毛も、そして股間に露わとなった存在感溢れる逸物も、実に巨大なものへと変化していたのである。
メジャーとノギスで、宿守り達がテキパキと、2人の身体を計測していく。
裸になる前の時点から天を指していた逸物は、宿守り達の温かな手のひらと、ノギスの冷たい金属との接触に、さらなる滾りを覚えているようだ。
「あっ、やばいっ、ノギスがっ、ノギスが当たるとっ、ヤバいですっ! 俺っ、イっちまうっ、ノギス当てられて、イっちまうっ!」
「左雨様、かまいませんよ。最後の夜です。派手に打ち上げてやってくださいっ!」
ノギスの感触に昂ぶりを押さえられなかったのか、左雨の逸物がびくびくと射精直前の脈動を始めていた。
そこに浴びせられた紫雲の檄が、とどめとなる。
「ダメだっ、イくっ、俺っ、イくっ、イくっ、イくぅーーーーーーーっ!!!!」
湯治最後の夜を彩る、白い大玉花火が打ち上がった。
前に座る幾人かに降り注いだその汁を、旨そうに舐め合う男たち。
前屈しようとする上半身を、なんとか意思の力で押さえつける左雨もまた、見事な益荒男となっていたのであった。
「幸いにして、左雨様の大発射も計測後でございました。それではここで、左雨様、右城様の最終計測の数値を述べさせていただきます」
茶野が声高々と宣言をする。
固唾を呑んで見守る面々の男たち。
左雨宗吉、42才
開始日
身長168センチ、体重78キロ
勃起時、陰茎長14.0センチ 直径4.6センチ
最終日本日
身長変わらず、体重120キロ
勃起時、陰茎長26.4センチ 直径5.5センチ
右城智也、40才
開始日
身長172センチ、体重70キロ
勃起時、陰茎長18.3さんち 直径4.4センチ
最終日本日
身長173センチ、体重110キロ
勃起時、陰茎長24.8センチ 直径5.3センチ
西山もそうであったが、どうやらここの温泉の効能は、陰茎増大に関しては、元のサイズが小さいほどその『効き』がよいのではなかろうか。
そう北郷は思い至ったのだが、口に出すことでもあるまいと、その思いを2人への和やかな笑顔と拍手に変えていたのであった。
こうして、北郷が相談を受けた案件は無事に解決終了し、左雨と右城という、また新たな『仲間』が増えた『金精の湯』であった。
最終日のこの後、本来寝静まるはずの宿のあちこちで、雄の獣達の雄叫びがさらなる遠吠えを重ねていったのは、言うまでもないことであった。
了