その1 祝勝会
のこったーのこったー。
はっけよーいっ、のこったー。
真っ白な審判服を着たイヌ科獣人、たぶんアラスカン・マラミュートの血が濃さそうな審判の気合い入れに湧き上がる会場。
土俵の上では廻し姿がすげえ似合ってる40代の虎獣人さんと、50代の猪獣人さんの取り組み。
200キロ近い巨体同士がぶつかれば、軽い空振が起きてるんじゃないかと思えるほどの衝撃波が会場内を走り抜ける。
町のアマチュア相撲大会、その最重量級の土俵下での観覧は、もう迫力抜群。
まあ、この階級の人達はみんな相撲廻しが似合いすぎる体型だし、土俵上の2人とも、っていうか、この階級の参加者全員、オレ自身も顔見知りだしね。
土俵上の2人も普段の練習はもとより互いに何度もやりあってきてる間柄なので、手の内は分かってる勝負。
年上の猪獣人が上手い寄りを見せたんだけど、虎族の捻りがすごくて土俵際での対決を制した虎獣人に審判の手が上がる。
ここでの午後の取り組みは8人しか参加者がいないのに、たぶん盛り上がりは幾つかの会場の中でも一番なんじゃないかな。
オレは今、町民体育館の土俵Aの砂かぶり席で、会社の先輩達と一緒に相撲観戦に来ている。
町単位のアマチュア社会人相撲大会といっても、もともと相撲部屋も多いこの地域ではかなり盛んな大会で、今では体重別の各級を合わせたら100人を越す参加者がいるって話し。
うちの会社、社長(というか名目は所長なんだけど)の、でっかい熊獣人『熊部威雄(くまべたけお)』さんが大の相撲好きで、本人もこの最重量級で何度も優勝してる猛者なんだ。
オレは獣人類の中でもかなり軽い方だし、どっちかというと敏捷性に特化してる族だから、格闘関係は苦手なんだけどさ。
そのオレ、高校出てから熊部所長の率いる鉄工所に勤めて3年目の21才。
リカオンをトーテムに持つイヌ科獣人の『トリル・ハンマ』だ。
イヌ科にしては大きくて丸い耳と、けっこう濃いめの体色毛が特徴かな。リカオントーテムってイヌ科の中でもあんまりいなくて、小型種中心の学校でもずっと1人だけだった。
実際、身体付きもかなり小型(158センチの57キロ、入社してからちょっと太った)なんで、おっきいヒト(熊族、猪族、虎族とか、成人平均値で120キロ越えの種族)が多いこの町ではかえって目立ってるのかもね。
一応、去年から一緒に住んでる将来のパートナー契約も考えてる相方がいて、その人もこの大会に出てる猪族の『猪狩優一(いがりゆういち)』さん46才。
さっき言ったオレが勤めてるとこの熊部所長の同級生で幼なじみ、しかも相撲好きって趣味まで一緒で、ちっちゃいときからずっと絡んでるって聞いてる。
優一さんのこと、最初はそのまま『猪狩さん』とか『優一さん』って呼んでたんだけど、なんか他人行儀で嫌だって言われて、今では『おっちゃん』って呼ぶようになっちゃった。
オレとしては上下のけじめ付けたい派なんで最初はとまどったんだけど、こういうの言ってるうちに慣れてくるってのは、あれ、ホントだよね。
で、体重別の取り組みとしては一番人数が少ないのがオレが今見てる最重量級、150キロ超級の試合になるんだけど、結局最終戦は、オレの相方の猪狩のおっちゃんと、うちの熊部所長ってことになった。
どっちもまあ身内というか、それこそチンポやケツの穴まで知ってる知り合いなわけで、2人とも土俵に上がった瞬間、こっちの席に向けてすげえアピールしてきて。
同僚達もみんな訳知りなんで、肩を突かれたり、頭はたかれたりで、なんかもう散々。
いや、それはそれで、オレとしてもちょっとにんまりしちゃったりする感じではあったんだけど。
オレと『おっちゃん』=『猪狩優一さん』との出逢いにも熊部所長が絡んでるし、もうなんとも言えない気持ちではあるんだよな。
そして3回戦目の決勝戦、長い勝負だったけど猪狩のおっちゃんが熊部所長をうっちゃっての優勝ってなったんだ。
オレとしてはどっちが勝っても身内みたいなもんだし、鉄工所にもおっちゃんよく顔出してるから、同僚達からしてもなんか盛り上がっちゃう感じで。
で、その日の夕方からの祝勝会。
参加者とそのパートナーが参加して、総勢20人ぐらいの大宴会が始まった。
オレは猪狩のおっちゃんの引きで、熊部所長は職場の先輩を一人誘ってって感じで、同じ鉄工所から3人参加することにもなったワケ。
「いやあ、猪狩さん。昨年に続き、2年連続の優勝おめでとうございます!
それでは、優一さんの優勝を祝って、カンパーイ!!」
一応、挨拶とか乾杯の音頭とかあったんだけど、もうこのクラスの人達って町内でも固定化しちゃってて、みんな知り合いだし飲み友達だし、そしてもちろんヤリ友達だし。
パートナーも連れてきた人は全員性的パートナーばっかり&雄獣人ばっかりなんで、もうなんか最初っから体育会系というか、全員雄同士での町内のおっさん達のぐだぐだ飲み会というか、そんな感じで。
選手参加者はもう、とにかく200キロ前後のデッカい人ばっかりだし、連れてきてるパートナーさん達も、半分ぐらいははそんな感じのヒト達。
オレ含めて、細いとか小さい系は、オレともう1人のイヌ科の人、あとはヒト族の3人ぐらいだったかな。
あ、でも、この世界、体格差っていうか、デカいのとちっこいのの組合せに燃えるヒトも多くて、すみっこに追いやられるとかはぜんぜん無くってさ。
けっこうみんなから、ちやほやされてるんだぜ。
「トリル君も見に来はじめてもう3回目か。毎回のことじゃああるが、猪狩さんと熊部さんの決勝戦なんてのは、たまらんかっただろう?」
「あはは、両方ともすごい知り合いですし、去年も同じ組合せでしたしね。って、他の人もオレ含めて、みんな知り合いじゃ無いっスか!」
選手の中では一番年上の『猪口(いぐち)』さんが声をかけてくれる。
猪口さんの言う通りで大会見に来るのも3回目だし、所長の関係で参加者みんなうちの鉄工所に顔出したりするしで、他の選手のヒト達とも普通に話せる感じ。
猪口さんは猪狩のおっちゃんと同じ猪族。もう56才になるとかは聞いたけど、まだまだ身体の張りとかすごいし、引退の気配なんてみじんも感じられないヒト。
「まあ、一番重いここと一番軽いとこは、参加選手がほとんど固定化してっからな。確か100キロから120キロんとこが一番多いんだったか?」
「ああ、あそこは40人越すって聞きますね。2日に分けてやってるし、試合数そのものも多いから大変だろうし」
「あそこまでいくと、最初から階級内で組み分けとかしたがいいかもな。6試合とか7試合こなさんとたどり着けないっても、町内の大会としちゃきつかろう」
格闘技だし勝負事ではあるんだけど、終わってみればやっぱり町内の仲いいおっちゃん達同士なわけで、勝った負けたでどうのこうのってのが全然無いのは、見てるだけで年が離れたオレでもちょっと居心地よかったりするよな。
人数多いとこだと入れ替わりも激しいだろうし、たぶん雰囲気は全然違ってくるんだと思うけど。
「相変わらず、猪狩さんのチンポ、デカいし硬いなあ。今日は優勝のご褒美に、トリル君にさんざんイかせてもらわんといかんですよね」
「もう取り組んどるときから夜のこと考えて、滾っとりましたわ。最低でも5発ぐらいは抜かしてもらいますー」
「はは、トリル君、頑張らんとな」
「あ、えーと、その……。期待に添えるよう、努力します」
がははってみんな笑うんだけど、こういう会話、最初はびっくりしてたオレも、もう慣れちゃった。
年のせいもあるんだろうけど、みんなそういうのにすげえあっけらかんとしてるというか、なんと言うか。
まあ一番は、全員が全員『ヤリ友同士』ってことなんだろうけどね。
参加選手はシャワーも浴びずに参加してるし大会の熱気そのまんまって感じで、さすがに廻し姿のままじゃ無いけど、それでもみんな布一枚の褌姿だし。
同席者もだいたい上は脱いじゃってるし、ヒト族少ないと飲み会ってだいたいこんな感じになるのかな。
で、その褌の前、みんな盛り上がったまんまで。
中には先走りのシミとか拡がってるヒトもいて、試合でのアドレナリン分泌とその後の性的衝動の昂ぶりがリンクしがちなのはみんな分かってるから、そんなのはもう普通のことで。
オレの相方の猪狩のおっちゃん、30センチは優に超える種族独特のエッジの効いたねじれてるチンポがもうギンギンで、褌の前布突き上げてる。かろうじて引っかかってる布も、横から覗けば丸見え状態。
おっちゃんもそういうノリ好きだから、直ぐに布もはぐっちゃって、みんなに触らせてるし。
「トリルのももう、いつでもOKって感じだな。優一、お前も帰ったら、さんざん掘ってもらえや」
熊部所長、今度はオレの股間覗き込んで大声で言うから、周りの人達もどれどれって見に来ちゃって。
同席してるそれぞれのパートナーも、全体の雰囲気や相方の興奮伝わるわけで、俺自身も短パンの中、痛いぐらいにおっ勃ってたんで、もうなんの弁解も出来ないんだけど。
宴席の面々、さすがに大型獣人族でも150キロ越え&しっかり身体動かせるってなると、鍛えてることと一定の年齢が必要になるようで、ここの8人、一番若くても3年目で29才になる『猪西(いにし)』さんで、あとはもう30代後半とか、40代の人がほとんど。
猪狩のおっちゃんと熊部所長が46才ってことで、この2人がここ何年かはどっちかが優勝するってのがパターン化してきてるみたい。
オレの猪狩のおっちゃんとの一昨年の『初めての出逢い』って奴もこの大会絡みだったし、その『初めて』絡みの体験がすごい強烈だったってのも、なんか目の前の景色とだぶっちゃって。
猪狩のおっちゃんや、他の参加選手のおっちゃん達、そのパートナーさんとかに囲まれながら、オレ、今はオレの隣にいてくれてる『おっちゃん』と初めて知り合った2年前のこの相撲大会のこと、思い出してた。
おっちゃんとの出逢いと、その後に待ち受けてたとんでもないことの話。
聞いてくれるかなあ、みんな。