で、今日がその『お役士渡し』ってのをやる金曜日。
親父とは道場のときからはまたあんまり話せなくなってたけど、高校生と親って、普通そんなもんだよな。
朝から爺ちゃんが「ちゃんと溜めといたか?」とか聞いてきてさ、俺、つい「まあまあかな」とか答えちまった。
親父がじろっとこっち見たんだけど、なんかホントのこと言えなくって。
親父が「センズリしないで溜めとけ」とか言ってたのは覚えてるんだけど、あの日、あんな激しい親父のセンズリ見せつけられて、我慢とか出来るわけ無いじゃん。
あの後、部屋に戻った俺、結局7回、抜いちまったんだよな。
我慢しとけ、って言われてんのに普段より回数増えちまってるのもどうかとは思うけど、親父のしごいてる姿が頭に浮かんじまうと、もうダメでさ。
イってもイってもイきたりない、ってのはああいうのを言うんだって思ったんだ。
実際には火水って、やっぱり普段通りにやっちまって、さすがに昨日の木曜は5回で押さえたけどさ。俺にしてはかなり頑張った方なんだけど、やっぱりまずかったかな。
今朝も普段は2、3回抜いとかないと授業中とかやばくなるんだけど、なんとか1回で抑えたんだぜ。
「まあその、俺なりに、ってことだよ」
誰からも聞かれてないのに答える俺。
まあ、爺ちゃんも親父も自分のこと考えて、高校生の俺が言われた通りに我慢出来るなんてのは思っちゃいなかったとは思うんだけどね。
高3の1月とか、もう授業もほとんど無くなってきてるし、今日も午前中だけの登校なので、昼には帰ってくることになる。
親父と爺ちゃんに、どうすればいいって一応聞いとかなきゃな。
「俺、今日昼には終わるけど、『お役士渡し』って奴、どうすればいいんだ?」
「帰って昼飯喰ったら、準備に入るか。頭と目立つ場所の毛を剃って、その後は、身体の中も浄(きよ)めんとな」
「は? 頭、剃るって、それなんだよ?!」
爺ちゃんの説明に、俺、思わず声上げてた。
「なんだ、御藏。言って無かったのか」
「ああ、忘れてたな」
「いやいや、おかしいだろ? 忘れてたって! 頭、剃るって、俺、坊主になるんかよ!」
俺、びっくりしてもいい話しだよな、これって?
「お坊さんとは違うんだが」
「そんなこと、言ってんじゃねえよ! なんで頭剃んなきゃいけないかって、聞いてんの!」
「お前、うちの神社の謂われは御藏から聞いとるんじゃろ?」
「ああ、それは聞いた。スサノオ様の体毛をあちこちに植えて、それが今の日本の木や草になって、だからイソタケル様は林業や生命力の神様だって話し」
「うむ、で、切っても剃っても、また生えてくる髪や体毛、爪の話しも聞いたと思うが?」
「いや、確かにそうだけどさ……」
「お前と御藏が行う『お役士渡し』は、互いの体力と生命力を極限まで削り、そして交換し合うってのは?」
「うあ、まあ、そ、それも聞いたけど……」
「そこまで聞いておれば、普通の頭しとりゃ、体毛を1度剃り、再び生えてくることの確認が儀式になりそうなのも分かるだろうが」
「え、え、それって、俺が頭悪いせいなんかよ?」
俺の反論、だんだん弱々しくなってきてる。
「頭悪いというと語弊があるが、もうちっと、頭を回してみいという話しじゃったな」
「ま、まあ、剃らなきゃいけないってのは分かったけどよ……」
俺、爺ちゃんに丸め込まれて無い?
「俺も剃るんだ。そう気にするな」
始めて親父が口を開いた。
確かにそろそろ卒業の俺より、仕事してる親父の方が周りから見られるわけで大変だろうけど……。って、親父が坊主にでもしたら、もうヤーさんと見た目変わんないじゃん!
「親父の方が大変ではあるだろうけどさ……、けどさ……」
「ほれ、早く喰わんと、間に合わんのじゃないか?」
話しに夢中になってた俺、慌てて時計見て朝飯詰め込んだ。
頭剃るってことだけでちょっとパニックになってた俺は、爺ちゃんの言ってた『身体の中から浄める』って言葉、突っ込み忘れたまんま家を出ちゃったんだよな。
……。
…………。
………………。
「御藏、お前、ホントにちゃんと説明してたのか?」
「奉納に夢中になってしまってて、確かに言わんといかんことを忘れてしまってたような気はするな」
「まあ、禄朗のことだ。ぶつぶつは言うだろうが、最後はやってくれるとは思うが……。あやつのあの調子だと、どうせ『お浄め』のことも言っとらんのじゃろう?」
「浣腸ぐらいでぐだぐだ言うようには、育てなかったつもりだったんだがなあ……」
「儂やお前のときとは時代が違うわい。まあ、本気で嫌がるときには早めに『務めの香』を使うまでじゃが」
「親父さんの方が、俺より過激な発想だと思うんだが?」
「最終手段と言う話しじゃ。まずはアレが帰ってきてからの説明は、ちゃんとお前がせいよ」
「分かってる。それが俺の責任って奴だろうしな」
………………。
…………。
……。
その日の俺、半日じゃああるけどさ、勃起、つうか、射精しちまいそうになるムラムラをなんとか抑えて頑張ったんだぜ。
普段だと2、3発抜いてから登校してんのに、1発で堪えて、しかも夜には親父との『お役士渡し』ってのがあるかと思うと、どうしてもそっち方面のこと考えちまうしさ。
クラスの奴から『お前、鼻の穴、広がってんぞ』とか言われても、まあ、仕方無いって言うか。
家に帰るとき、チャリのサドルの振動が、もうやばくてやばくて。
勃起したまま、先走り流したまんま、俺、家の玄関にたどり着いてた。
「おう、おかえり」
爺ちゃんが迎えてくれる。
「親父は? 休み取ってるんだろう?」
「ああ、早めに支度するって、昼飯喰って、今は便所に行っとるわ」
「あ、そうなんだ」
便所で支度?
意味が分かんなかったけど、とにかく腹も減ってたので飯喰おうと、部屋で服脱いでボクブリ一丁になる。俺、飯喰うときって汗かくから、1年中パンツだけなんだよな。
居間に下りて、爺ちゃんが用意してくれてた昼飯に手を着ける。
親父もしばらくしてなぜか風呂場から出てきてテーブルに着いたけど、飯も終わってるんで、茶、飲んでる。
親父も珍しく下着だけの姿だったけど、男3人の家だとそう変な恰好でも無かったし。
「頭剃るって言ってたけど、どうすんだよ?」
「ああ、それはそれで道場でやるんだが、その前にもう一つやっておかんといかんのがあってな」
「まだあんのかよ? まあ、坊主になる、親父とスケベするって聞いた後じゃ、別に何聞いても驚かねえけどさ」
「ま、ロクが飯喰ってからにしようか」
親父、爺ちゃんと目配せしてなんか言い淀んでんだけど、これ以上、なんかあるってことなんかな?
とにかく腹に喰いモン入れようとがっつく俺。
「喰ったぞ、親父。で、なんなんだよ?」
げっぷしながら言う俺に、ちょっと親父が戸惑ってる。
「ああ、そうだな……。『お役士渡し』は夕方前からやろうと思ってるんだが、その前にせにゃならんことがあってな」
「なんだよ、頭剃るってのは、朝、聞いたじゃん」
「うむ、それはそれで道場で準備はしてるんだが、それ以外にもう一つな」
「もったいぶらずに早く言えよ。俺ももう、腹はくくってるからさ」
親父と肌合わせること考えたら、まあ、その頭剃るってのもそんなもんかと思うし、それ以上になにがあるんだって思ってた。
まあ、次の瞬間の俺、大声上げちまったんだけどさ。
「今からお前に浣腸するから、しばらく我慢してから便所で出してこい。その後、尻の中を洗うからな」
「は?! はあっ!!!!」
驚いていいよな、俺?
浣腸? 便所って言ってるし、聞き間違えじゃ無いはず。
「何言ってんだよ! 別に俺、便秘でもねえし、朝もけっこう糞出たし。って、いや、変なこと言わせんなよ! ふざけてんのか? 親父?」
「ふざけてなんぞ、おらんがな」
親父の奴、いつものというか、あんまり表情変えずに流すからさ。1人で興奮してる俺の方が馬鹿に見えちまう。
「なんなんだよ、浣腸って。説明しろよ!」
「説明する前にお前が興奮してるんだろう」
ぐうの音も出ない俺。爺ちゃんが面白そうに親父とのやり取り見てんのが、なんだかくやしい。
「頭を丸めるのは『お役士渡し』が建速須佐之男命様(たけはやのすさのおのみこと)と五十猛尊(いそたけるのみこと)様の故事に倣うものだからってのは分かってるな?」
「……ああ、そっちは了解してる」
「その『お役士渡し』、何をするかもこの前伝えたよな?」
「あ、ああ……。その、俺と親父が柔道で体力使って、その後に……」
「その後、何をやるって俺は言ったっけ?」
「その、ああもう! そうだよ、俺と親父が素っ裸になってチンポしゃぶりあって、セックスするんだろ! ……って、あ、ああ? セ、セックスぅ?!」
俺、もうどうにでもなれって、大声で叫んだ。
その瞬間、あっと言うひらめきが、俺の頭の中に飛ぶ。
「……、どうやら分かったようだな」
「あ、ああ、ああああ……」
俺の頭、ぐらぐらしてた。
男同士でセックスするって、……そう、ケツ使うってことなんだよな。
この前、親父から儀式のこと聞いたときもそうだったかもだけど、俺、なんかそういうの、頭の中から考えることすっ飛ばしてたんだと思う。
なんか、すげえ綺麗事にしたかったんだろう。後から思うと、ホントにそうだったんだろうな。
俺が親父のケツに、おっ勃ったチンポを挿れる。
親父が俺のケツに、おっ勃ったチンポを挿れる。
当然『中』が汚れてりゃ、それなりに悲惨なことが待ち構えてるってのは、俺にだって分かる話しだ。
で、親父がもう『準備』してたってことは、くそっ、そういうことなんかよ……。
「御藏はもう済ませてきておるぞ。次はお前の番というわけじゃ」
爺ちゃんが横入りしてきた。
「その、やんなきゃいけないのかよ、それ……」
一気に俺の声がしぼむ。
「お前がどうしても嫌だっていうなら仕方が無いが、俺の経験からすると、お前の方が恥ずかしく感じちまうと思うぞ」
「俺、浣腸とかしたこと無いぞ」
「覚悟は決まったか? 入れてやるから、ほら、パンツ下ろせ」
親父、こういうときって即物的っていうか、超効率的っていうか。
俺が言うのもなんだけど、もう少しこう、相手の気持ちを思いやるとか無いんかねえ。
爺ちゃんが浣腸、もう用意してた。
なんか大っきいのが4つあるんだけど。
「おい、1個じゃねえのかよ!」
「お前のガタイじゃ、1個じゃ足りんだろうと思ってな。俺でも普通は2個、溜まってそうなときは3個使うしな」
「その、腹痛くなるんか?」
弱気な俺。
「まあ、そうだな。急に来た下痢、ってのが一番近いだろう。ただ、すぐに出しちまうと、ケツ穴近くの部分しか下りてこないので、出来ればぎりぎりまで我慢して出すようにしろ」
「ぎりぎりって、どのくらいだよ?」
「だから、ぎりぎりまでだろう?」
いや、時間を聞きたいんだよ、俺は。
「30分とかか?」
「そんなに待てたらギネスに載るぞ。初めてなら、5分も保てば上等だ。便所に入っちまうと我慢出来なくなるから、ここで入れてそのまましばらく待ってみろ。とにかくひたすら我慢してからぶっ放せ」
親父のギャグって、分かりづらい。
爺ちゃんがくっくって笑ってるってことは、おかしい話しなんだろうけど。
「ああもう、分かったよ! どうせ最後には親父と『ヤる』んだろう。矢でも鉄砲でも持ってこいってんだ!」
「親父さんみたいなこと言うんだな、お前も」
「儂でも今どき言わんぞ、そんな台詞」
ああ、うちの男どもってのはなんでこう、妙なとこで冷静なんだよ。
孫が、息子が気合い入れてんだから、それなりに気を遣えって思うよな、まったく。
俺、もう覚悟決めて、親父と爺ちゃんの前でスポブリ脱いじまった。
1人だけスッポンポンってのもあれだけど、どうにでもしろって感じになってたんだと思う。
「気合い入ったみたいだな。よし、そっちのソファに左側の腹を下にして横になれ。で、俺の方に尻を突き出せ」
親父が、浣腸を手に取ってる。
俺、素っ裸のままソファに身をかがめて横になり、尻をぶりっと突き出す恰好を取った。
「こうなったら早くしろよ。この恰好自体がこっ恥ずかしいんだよ!」
親父や爺ちゃんに背を向ける形になっててよかったと思ったな。
後から考えても、親父とスケベしたときより、このときの方が恥ずかしいっていうか、いたたまれない気持ちになってた。
「入れるぞ。変な感じがすると思うが、我慢しろ」
親父の言葉と一緒に、尻の穴になんか入ってくるのが分かった。
ん? って最初思ったんだけど、水っていうか、液体が入ってくるのは分かったけど、予想してた冷たさは無い。
「ちょっと温めておいたからな。腹が痛くなるのはだいぶ和らぐじゃろう」
爺ちゃん、気を遣ってくれてたんだ。
確かにこれで冷たいの入ってきたら、一気に腹痛くなる気がしてた。
「1個入ったぞ。あと3つ、我慢しろ」
「早く入れろよ。まだ全然効いてこないぞ」
「すぐ来るさ。とにかく我慢しろ」
まだ1/4かよ。俺、もうなんか諦めの境地みたいになってたな、あのとき。
「どうだ、効いてきたか?」
「あ、う、うあ、なんだ、これ……」
「糞出したくなっても、なるべく我慢しろ」
「いや、これ、出るって、親父、出るって!」
最初は全然感じなかったんだけど、2分ぐらいしてからだったろうか。それこそ『一気に』、それがやってきた。
「あと1分、我慢しろっ、禄朗っ!」
「ダメだってば、トイレ行かせろっ、おいっ、行かせろってば!」
親父、俺の下半身、がっしり抑えてるんだ。変に動くとヤバそうで、俺、声だけで抵抗してる。
しかも、このときの俺、もう怒鳴れなくなってる。
腹から声出す、っての、文字通りの意味だったんだな。
もう、俺の頭の中、いかにしてケツの穴を絞めておけるか、もうそれだけしか考えられなくなってた。
「漏れるって、漏れるって、おい、トイレっ、トイレっ!」
これ、動けても絶対走ってなんか行けない。
もうちょっとでも気を許すと、水っぽい何かが尻から漏れそうだった。
「そのくらいでよかろう。行かせてやれ、御藏」
爺ちゃんの声に、下半身を押さえつけてた親父の力が緩む。
「ゆっくり立って、便所で出してこい。急ぐと漏らすぞ」
実の父親の言葉とは思えねえよな。
まあ、そんときの俺は、とにかくトイレに行ける、腹の中のもんを出せるって、それだけしか考えられなかったけど。
「ふうー、やばかった」
「出し切ったか?」
「うわ、親父っ!! 入ってくんなよ!」
俺が思う存分クソした後の余韻にひたってたら、親父がドア開けて、便所の中に入ってきた。
いや、別に出してるとこ見られたわけじゃないけど、匂いとか、色々気になるだろうがよお。
「上半身を左、右って大きくひねってみろ」
「は? あ? ああ」
なんか親父のあくまで普通な声かけに、拍子抜けした俺が身体をひねる。
すると左にぐっとひねったとき、まだ出るのがあったんだってくらい、尻の穴を通過するもんがあった。
「よし、後は風呂場でやるぞ。ざっと拭いたら、来い」
呆気に取られてる俺を尻目に、親父が便所から出て行く。
なんか俺も慌ててケツ洗って、そのまま風呂場に飛び込んだ。
「ほら、これ尻に当てるから、ケツを突き出せ」
親父が手にしてるのは、シャワーの先外したホースだ。
なんかちょろちょろ水出てるけど、あれ、俺の尻に入れるんか?!
「あ、冷たいじゃんか!」
さっきの浣腸と違い、冷たい水が入ってくるのが分かる。
「こっからは水の方がいいんだ。ほら、排水溝の上にしゃがんでいきんでみろ」
「え、あ、こうかよ」
なんか親父のペースに巻き込まれてる俺。
言われた通りにグレーチング外した穴の上にケツを持っていくと、ぴゅーっと水が出る。
「よし、もう1回だ」
結局、それから3回、ホースで水を入れては出してを繰り返した。
親父の言う通りで、まさに『綺麗に』なってってるのが自分でも分かる。
最後の2回は、入った水そのままが出ていってるのが、目にも鼻にも分かったんだよな。
「後はシャワーで少し身体暖めておけ。裸のままでいいから、そのまま道場に来い。後のことは親父さんと俺とで準備しておく」
俺の中が綺麗になったのが分かったのか、親父がとっとと風呂場を後にした。
なんかこう事務的っていうか、こういうとき、実の息子にかける声ってあるんじゃないんかよって思いながらも、言われたままに熱めのシャワーを浴びる俺。
バスタオルでざっと拭って、もういいやって、ホントにそのまま素っ裸で道場に向かったんだ。