龍騎と竜人 仮の契り

その2

リハルバとグリエラーン

 

リハルバとグリエラーン

 

「お互いの肉棒を舐め合い、雄汁をすすり合おう」

 

 リハルバの言葉を待っていたかのように、グリエラーンが頭の向きを変える。

 相手の下半身が目の前に来るように横たわり、先ほどの吐精で汁まみれの肉棒と己の精汁がたっぷりとかかった下腹部の舐め合いが始まる。

 

「ああ、リハルバの舌が、私の逸物をねぶり上げる……」

「グリエルの口も気持ちいいぞ……。お互いの汁を口に溜め、口接をしながら飲み交わそう」

 

 相手の下腹部に顔を埋めれば、むわりとした濃厚な性臭が鼻腔を襲う。

 それだけでも昂ぶる相手への熱情が、精汁の飲み交わしという行為でさらに燃え上がっていく。

 

「ああ、私とグリエルの精液が混ざると、こんな味になるのだな……」

「リハルバ……、たまらぬ、たまらぬ……。次は、次はどうすればよいのだ?」

 

 経験の少ない、いや、性的な情交そのものが初となるグリエラーンには、どのような手順でことを進めていけばよいのか、本当に分からないのであろう。

 果たして己の欲望のままに振る舞ってしまえば、目の前の若者に嫌われてしまうのでは無いのか、身勝手な奴と思われてしまうのではないか。

 若きグリエラーンの頭には、そのような思いが渦巻いていた。

 

「次はいよいよ、互いの逸物を相手の肉腔へと差し入れよう。こればかりはラルフとは出来ない行為であったのだ」

 

 その肉体構造から、下半身においては肉茎を差し入れる先が肛門のみとなるノルマドの男達。

 もちろん彼らと接してきた長い年月により、リハルバらドラガヌの者に取っても、ノルマドとの後口を使った行為は『それだけで』満足する行為としての条件は満たしている。

 だが、同族、あるいは竜人達のような比較的その肉体構造が似通っている相手の総排泄腔、いわゆる『スリット』を同時に犯し合うという、なんとも言えぬ悦楽に満ちた行為とは、やはり一線が画されてしまうのだ。

 

 先にリハルバが呟いた『ドラガヌ族における成人への通過儀礼』では、おそらくはそこを一族の男達により指導・教育されたのではなかろうかと、悦楽に染まる頭で思うグリエラーン。

 

「グリエルも、一人で逸物をいじる夜を多々過ごして来たことだろう。そのようなとき、己のスリットの『中』を、やはりその指先でいじっているのではないのか?」

「ああ、その通りだ……。逸物を扱きながら、垂れ落ちる先露で『中』をいじると、とてつもない快感に襲われてしまう……」

「我ら同士だと『それ』を互いの逸物で出来ることになるな」

 

 微笑むリハルバの言葉が理解できたのだろう。

 グリエラーンの顔があまりの快感への期待に、ますます蕩けていく。

 

「ああ、聞いてるだけでたまらぬ……。リハルバのスリットに私のものが、私のスリットにリハルバのものを差し入れるのだな……」

「ああ、そうだ。こればかりはラルフとは出来なかった行為。父を初めとし、一族の者達に教わった行為だ。

 さあ、互いの肉棒で得ることが出来る『中』と『外』の快楽を、同時に、そして存分に、楽しもう」

「どうすればいい? リハルバ、私を、私を導いてくれ」

 

 無論、グリエラーンが王宮で学んできた知識の中には、互いのスリットを犯し合う異種族との性的接触について記したものもあったのではあろう。

 それでも、実践に当たっての具体的なやり方までは教えてくれぬのが、『知識』というものの持つ限界なのやもしれぬ。

 

「まずは、互いの勃起を根本で交差させる」

「ああ、リハルバの剛直に、私の逸物が跳ね返されそうだ……」

 

 2人の肉棒が、その根元を重ね合わされる。

 

「このままでは交差の圧で斜め横を向いてしまう逸物の方向を正面に定め、相手のスリットの上部に差し込んでいく……」

 

 リハルバの手により、少しばかりねじれた形で交わる巨大な2人の逸物。

 

「ああっ、入ってくるっ! リハルバのがっ、挿入ってくるっ!! そ、そして、私のもっ、ああっ、リハルバのっ、中にっ、中にっ……!」

 

 解剖学的な構造から、有鱗目をトーテムとする総排泄腔を持つ人獣類のスリット内部の空間は、『下部方向』にはその勃起を支える筋肉により挿入は困難であるのだが、『上部方向』についてはおよそ腹腔空間さえも押しのける形で、かなりの容積を持つものでも受け入れが可能となる。

 このあたりは事前の準備と慣らしを十分に行ったノルマドの肛門と直腸において、ドラガヌ達の長大な逸物を受け入れることが出来ることと、ある程度は『似た』感覚として受け止めることが出来よう。

 

「おおっ、グリエルの中もっ、スリットの入口もっ、そして交差した逸物そのものもっ!

 全部がっ、全部が私のものをっ、私の逸物を締め付けてくるぞっ……」

 

 リハルバの言葉は、まさに似た身体構造を持つ族同士ゆえに感得出来た悦楽の証左であった。

 

「ああっ、こ、これは凄い……。リハルバっ、リハルバっ……。こんなのはっ、初めてだっ、私はっ、私は初めてなんだっ……!」

「もっと、もっと深く挿れ合おうっ、グリエルっ!! 互いの身体がっ、互いのスリットがっ、密着するまで挿れ合おうっ!!!」

 

 まだ2/3ほどを『外』に残していた二人の逸物が、透明な液の滴る相手のスリットへゆっくりと押し込まれていく。

 互いの交差した部分すら呑み込んだスリットの締め付けは、筋肉で構成された肉棒をこれでもかと絞り上げ、腹腔までも押し上げられた先端の膨らみにはドクドクとした脈動とともに血流が流れ込む。

 スリット上部、腹腔へと続く下腹部の中で、ぎっちりと肉腔を埋めた生殖器がそれぞれの体動に合わせて、ずりずりとその『中』を動き回るのだ。

 

 それぞれの一族の中でも、二人の逸物は巨大な、長大なものと分類されることだろう。

 

 3段の瘤を持ち、その太さに余りあるグリエラーンのそれが。

 根本と先端との2カ所の膨らみと、その全長が驚くほどのエッジの効いた『捻れ』を伴うリハルバのものが。

 互いのスリットの奥深くに差し込まれ、交差部分、結合部分すら見えなくなるほどに、その腰が密着していく。

 

「すごい……、全部っ、全部感じるっ! こ、これは、た、たまらん……」

「グリエルっ! 口も吸い合おうっ! 舌を絡ませてっ、唾液を飲み合おうっ!!」

 

 充血して敏感になったスリットの縁が潤滑体液にまみれて、ぬるぬると、ぐちょぐちょと擦り合わされる。

 口吻を交わし合い、互いの口中に差し込まれた舌が、牙と歯をねぶり合う。

 口の端から垂れ落ちる唾液をすすり合い相手の口に戻せば、さらに粘度を増したものが己の口へと差し入れられる。

 

 ぐじゅっ、ぐじゅっ……。

 じゅぷり、じゅぷり……。

 

 スリットの『中』も、『外』も、己の逸物とは違う形状の『それ』が、抉り、捻れ、突き上げられ、引き抜かれていく。

 

 挿れる。

 挿れられる。

 擦る。

 擦られる。

 

 スリットの『中』では粘膜と粘膜が、スリットの『外』では鱗状の皮膚との境が、ありとあらゆる組み合わせによる摩擦で刺激されていく。

 その生み出す快感の総量は、二人のこれまでの人生の中で初めて感じるほどの、凄まじい割合を占めるものとなっていた。

 

「グリエル……。このまま、互いのものを『挿れた』ままで、『中』の刺激だけで、イこう……」

「ああ、リハルバ……。イきたい、リハルバの『中』で、イきたい……」

 

 リハルバはその長大な逸物をグリエルのスリットから抜き出す動きをせず、互いに押し付けた下腹部のわずかな動きだけで吐精を果たすようだ。

 ぶじゅぶじゅと泡立つほどに濡れそぼった二人のスリットは、たとえ間近で観察するものがいたとしても、互いに差し込まれた逸物は一切外気に触れることなく、ただひたすらに周辺の体表が動いて見えるだけである。

 

「リハルバっ、リハルバっ!! 扱いてもいないのにっ、動かしてもいないのにっ、イきそうなんだっ! もうっ、もうっ、リハルバの中でっ、イきそうなんだっ!!」

「私もだっ、グリエルっ!! 一緒にっ、一緒に、イこうっ!!!」

 

 強く抱き合った二人。その下半身では上下前後の動きは見えず、わずかに揺すられる腰と腹の蠢きが、互いの逸物にとてつもない快感を呼んでいるのであった。

 ノルマドら、哺乳トーテム族との交わりではその『入口』たる肛門括約筋での『締め上げ』を堪能してきたリハルバ。

 だが有鱗目をトーテムとする竜人と龍騎の交わりにおいては、互いの『スリット』の内部全域が『蠢き』『締め付ける』機能を有している。

 

 粘膜表面の蠕動と。

 筋肉による締め付けと。

 流れる血潮の脈動と。

 

 それらすべての刺激が互いの肉棒にまとわりつき、擦りあげ、揉み上げを行っていた。

 びくびくと痙攣するかのような快楽の信号が、互いの肉体を巡りゆく。

 

「ああっ、イくぞっ、リハルバっ!! リルバの中にっ、イくぞっ!!!!」

「うあああっ、あっ、あっ……! 私もっ、私もイくっ! グリエルのっ、グリエルの中でっ、イくっ、イくっ、このリハルバがっ、グリエルの中でイくぞっ、イくっ……!!!!」

 

 吐精の瞬間、あまりの快感に仰け反りそうになる互いの肉体を必死に抱きしめ合う二人。

 スリットの中に噴き上がった汁が下腹部をわずかに膨らませれば、膨張するその感触すら悦楽と味わう二人。

 

「ああっ、出てるっ……。グリエルの汁がっ、わ、私の腹の中に……」

「分かる……。分かるぞっ、リハルバっ。リハルバの精汁がっ、熱い汁がっ、我のっ、我の中で出ているぞっ……」

 

 押し付け合った腰のわずかな脈動とともに互いの中に打ち込まれる汁は、そのあまりもの量をスリット内に留めることが出来ず、ぶしゅぶしゅと隙間から漏れ出てしまう。

 そのわずかな水音すらも、耳で感じる快感として受け止めてしまう二人であったのだ。

 

「互いに脈動がおさまらぬな……」

「普段でも2度や3度の吐精でおさまる我らでもなかろう」

 

 吐精の余韻に抱き合ったままの二人。

 互いの肉腔に差し入れられた逸物は、吐精による『萎え』が存在しない。それはそれこそ、二人の逸物全体が『筋肉』で構成されているゆえである。

 リハルバの呟きに答えるグリエラーンが、挿れたままの自分の逸物を、びくりと蠢かす。

 

「ああっ、感じるぞっ、グリエル……。今度は挿れたまま、今のように互いに己の肉棒を動かしてイってみるか?」

「それも凄そうだな。まったくリハルバの好き者加減は、私とどっこいどっこいだ」

 

 悦楽を感じながらも、笑い合う二人。

 天幕の外のダイラムが、己の逸物を握り絞めたままに微笑むのは、中の様子が『視えて、聴こえて』いるせいか。

 

 筋肉で構成された生殖性器そのものは、己の意思で動かすことが出来る。

 肉腔内、スリット内の動きと、生殖性器を同時に蠢かすことは、ヒト族が、二手二足の肉体構造を持つ人獣種が、両手の指を同時に多様に動かすこととなんら変わりはない。

 

「あっ、凄い……。グリエルのは根本と先端と、同時に動かせるのだな……。あっ、ああっ……」

「おおっ、リハルバの先が、私の奧をっ、ああああっ、そこを突かれるとっ……」

「ここ、ここがいいんだな、グリエル? こういうのは、どうだ?」

 

 押し付けあったスリットとは別に、上半身を少しばかり離して互いの結合部に目をやる二人。

 スリットの上部、哺乳類トーテム種族では臍のある辺りか。二人の白い腹側の『そこ』が、内部からの絶え間ない突き上げにより、幾度も、歪に、ボコボコと盛り上がっていく。

 

「うああああっ、凄いっ、そっ、そんなことっ……。全部がっ、私の全部がっ、擦られてっ、押し上げられていくっ……」

「私のは意図的に『捻れ』させることが出来る。私のものを尻で受けるラルフも、これでよがり啼いてくれるんだ……」

 

 リハルバの生殖性器は『捻れ』を強めればその全長を縮め、緩めれば最大長へと復帰する螺旋撥条にも見紛える挙動を示していた。

 腰を動かさずとも『出し入れ』に似るその動きが、グリエラーンの肉腔を幾度も抉りゆき、湧き上がる快感は指を使った一人遊びでは達し得ないほどの『奧』から脊髄を駆け上がる。

 

「ああっ、またっ、またイきそうだっ、リハルバっ!!」

「私もだっ、グリエルっ!! また一緒にっ、一緒にイこうっ!!!」

「んんっ、むっ、あああああっ、出るっ、出るっ……!!」

「私もっ、私もイくっ、イくぞっ、イくっ、イくっ、イくっ……!!!」

 

 筋肉で構成される二人の逸物は、その形状の違いこそあれ『全体が粘膜で覆われ』『随意筋として意思による局部動作が可能』という共通の仕組みを持つ。

 互いのスリット内を刺激しあうそのやり方は、同族同士、もしくはリハルバとグリエラーンのような近い種族間でしか味わえない快感を生む。

 それが理解できるがこそ、グリエラーンはリハルバがときおり呟くラルフへの言葉に、深い感銘をも受けていた。

 

「さすがに、あれを感じながらの我慢は出来ぬな……」

 

 天幕の中の若者二人の3度目の吐精に合わせ、ダイラムもまた、その日2度目の精汁を噴き上げていたのだった。

 

「ふふ、ダイラム殿もまた一緒にイってくださったようだな……。

 グリエル、ダイラム殿は、その、我らのことがすべて『視えて』おられるのだろうか?」

 

 匂いと気配で外の様子を察するリハルバではあるが、その疑問ももっともなものである。

 

「前に師に聞いたときには己が張った結界の中については『ヒトとモノの動きはほぼ分かる』『会話の詳細までは分からぬが、感情の動きによる想いは伝わる』と仰っていたな……」

「私にもダイラム殿の気配が感じ取れるということは、グリエル達の言う『結界』とは、エネルギーの幕のようなものとは違うのか?」

 

 交情の間の問答もまた、互いを理解し合うという『契り』の目的の一つ。

 それを知るリハルバが、己の疑問を互いのスリットに性器を埋めたままの状態で呈していく。

 

「うーん、ダイラムから教わった文言を言うしか無いんだが、どうやら魔導で言う『結界を張る』というのは、空間を指すのでは無く、あくまでも『そこにある物体の表面に依存する』みたいなことを聞いたことがあるな。そして魔導の力そのものは、我らの思考よりも『感情』の方を、敏感に読み取ることが出来る」

「ああ、なるほど。この天幕の『形や空間』を覆っているわけで無く、地面や褥(しとね)、我らの肉体や天幕の布そのものに、薄く力をまとわせているということか」

 

 リハルバの理解の早さに驚くグリエラーン。

 

「ああ、だからこそ、ダイラムには我らの『動き』や『感情』が分かるし、私達の側でも『繋がり』を感じとることが出来る」

「はは、そうなると、我らの感情や行為でダイラム殿が興奮してくれるとは、ありがたいことなのかな?」

「先生ほどのお人を興奮させてるのだと、誇りに思ってもいいんじゃ無いか」

 

 笑い合う二人の『感情』は、そのままダイラムにも伝わっていたようだ。

 悦楽と安堵の双方に身を任せるダイラムは、その弟子と『契り』を結ぶドラガヌの若き勇者に、改めての『信頼』を置くことになるのだろう。

 

 ……………………。

 …………………。

 …………。

 

 一日目の夜も更けてきた頃、二人の射精は既に70回近くにもなっていたのではなかろうか。

 天幕の中に籠もる性臭は、ただでさえ滾る若者達の精気をよりいっそう強化するだけのようではあるが、その中でもわずかな疲れが見えたのか。

 抱き合ったまま、リハルバがグリエラーンに言葉をかけた。

 

「少し休むか、グリエル?」

「ああ……。こちらが休まないと、ダイラムも大変そうだしな」

 

 互いのスリットを犯し合いながら、幾度もの吐精を行ってきた2人。

 ときには互いの一向に萎えぬ逸物をしゃぶり合い、口に出された大量の精汁を飲み交わす。

 じゅくじゅくと精汁溢れるスリットを舐め合い、すすり合い、互いの体液に濡れそぼった口吻を交わしては、体液と唾液の混合物を相手の口中へと垂らし合う。

 

 口で、手で、相手の肉腔で。

 幾度もの、幾十度にもわたる吐精の度に、より強く、より深く、互いの肉体と心を重ね合わせていく二人である。

 抱き合ったまま微睡む二人の『気』は、天幕の外のダイラムにもすぐに伝わるのだった。