賢馬人一族と新しき淫獣の出現

その2

魔の森

 

魔の森

 

「父上、森の北部、丘陵地帯よりどうやら狼獣人の一団が森へ侵入したとの報告が上がってきております」

「接触は済ませたのか?」

「いえ、向こうが4人、しかもそのもの達の様子にかなりの疲労が見られるとのことで、いずれかの使節団やあるいは軍事的行動とも判断できず、現在はレイク殿等の警戒部隊によって監視を続けている状態です」

「ふむ……。ノルマドの移動の時期には早いし、そのときも彼らはある程度の集団で動くはず。4人とは解せぬな……。気配を意図的に与えて村の近くまで誘導し、こちらの体制を整えた上で対応せよとレイクに伝えてくれ」

 

 魔の森の奥、ケンタウロス一族の塒(ねぐら)であった。

 

 ここより北方に位置するドラガヌの森で、グリエラーンとリハルバの『契り』が行われていたときのことである。

 

 もともと加工した住居を好まぬ彼らの村は、樹木上に張り巡らせた雨避けの布が目立つぐらいで家屋らしきものはほとんど見ることが出来ない。

 それでも村の東部にはそこだけノルマドのゲルにも似た簡便な屋根と壁で仕切られた建物が目立つが、これは生活物資の貯蔵倉庫とでも言うべきものであろう。

 他にもその居住圏域には、幾つかの加工された洞窟もあるようだ。

 

 塒全体においても雄性個体と覚しき姿は多数見受けられるが、雌性個体に関しては一切目に映らぬのは、ダイラムが疑問視していた生殖方法にも起因したものであったろうか。

 

 睡眠を立ったまま行えるというケンタウロス達にとり、いわゆる『寝室』の概念はほぼ無く、小刻みな短時間睡眠を日中も含め繰り返すというその特性は、あくまでも群れとしての危機管理を前提として獲得されてきたものであろう。

 トーテムとしての馬との違いは、塒に設けられた集会場的な空間の存在があった。

 

 その広く整えられた空間近くで先ほどの会話をしていた2人(2頭?)は、この森の一族の頭たる族長『ベルク』と、その息子『ロー』である。

 果たしてその会話は、ワイバーンの魔手から逃れ、この森に辿り着いたノルマド達の処遇についての話であったのだ。

 

 深く森を知り、思索の能力にも富む『賢馬人(けんばじん)』とすら称される彼らに取り、疲労したノルマド達に己の存在を気取られずに気配やかすかな物音を意図的に仕掛け、森の奥、塒近くの広場へと誘導するのは、ごく初歩的な技術なのだろう。

 狼獣人達の周囲で注意深く観察を続けているはずの副族長『レイク』への指示を、息子ローへと伝える族長ベルクである。

 

「汝等に問う。この森に来た目的はなんだ」

「うわっ! な、何者っ?!」

「そ、その姿はっ、ケ、ケンタウロスかっ!」

 

 疲れきった狼獣人の男達4人は、周囲の気配を訝しげに思いながらも、危険と感じる方向を避けつつ森を進んで来たつもりであった。

 見晴らしのよい丘陵や草原よりも移動速度は極端に落ちるが、追っ手からの視覚的な追跡や、食糧の確保には森林地帯の方が向いているとの判断から森へと入ったことそのものは、生存への有利な状況選択と言える。

 

 目配せした4人は、突如周囲に現れたケンタウロス達に自分達が既に包囲されていることを知り、この場を逃れることは出来ぬと判断したようだ。

 

「許可なくあなた方、ケンタウロスの森に分け入った我らを許してほしい。ノルマドのゲルにて起こった、ガズバーンの竜人帝国の奴らによる拉致とも取れる悲劇の現場から、我ら4人は、なんとか逃げ出してきたのだ」

 

 ノルマドの1人の放つ言葉は、賢馬人とも呼ばれるケンタウロス達に虚言は通じぬと知ってのことか。

 本人達もよく理解できていないあの日のことを、正直に語るしかないと判断している。

 

「嘘は言っておらぬようだが……。竜人の国ガズバーンは、ここ数百年、他国への覇権主義は取っておらぬと聞いている。

 拉致とは、はて、どういうことだ?

 詳しく話を聞かせてくれ」

 

 古くから種族として魔導の力が強いとされているケンタウロスの一族ではあるが、個々人に取ってはその力の現れの不均衡が見られるのはどの種族とて同じことである。

 しかし、対面した相手の言葉が正直なものかどうか、その本心の吐露であるかどうかを直感的に判断する能力は、この一族の皆が自然に備えているものであるようだ。

 その力あるがゆえ、今回のように不審な者についても村近くまでの誘導を行うことが、外部からの侵入者に対する基本的な対応となっているのだ。

 

「は、話す前に、ちと時間を、も、もらえぬだろうか……?」

「どうしたのだ? 森に入り幾ばくかの時間も過ぎたはず。そなたらノルマドの者としては、体温と心拍数もかなり上がっているな……。何か流行り病にでもかかっているのか?」

「いや……。我らにも分からぬのだが、とにかくあのガズバーンからの一行に薬か何かを盛られたらしく、あの日から、その、この身の滾りが治まらぬのだ……。

 あなた方に隠し事は出来ぬと聞く。

 単純に言えば、我らはみな、雄としての欲望、肉欲や射精欲が異常なまでに昂ぶってしまっている。

 道中、互いにその欲望を処理しながらでなければ動けなかったほどの火照りが、常に我らの中で渦巻いてしまっているのだ……」

 

 さすがに顔を見合わせ、訝しがるケンタウロス達である。

 それでも、その五感の鋭さから、ノルマド達の体温や脈拍の上昇、発汗具合には何かしらの『異常』を感じ取っているのか。

 逞しくも若き狼獣人達が、かろうじて局部のみを覆うランゴータでは隠しようも無いほどにその股間の逸物が隆々とした勃起を晒しているのを見れば、とにかく平常のノルマドとは違う、ということだけは理解したようだ。

 

「まあ、種族それぞれの肉欲の解消には特に何か思うところがあるわけでは無いが……」

 

 種族禁忌に触れる内容かもと、口淀むケンタウロス達。

 

「す、済まぬ。返事が待てぬ。我らの痴態をあなた方の眼前に繰り広げることになるが、申し訳ないっ!」

 

 ケンタウロス達が呆気に取られる中、2人ずつ番(つがい)となった狼獣人達が地面に横たわり、いきなり互いの勃起した肉棒のしゃぶり合いを始めてしまう。

 

 じゅぷじゅぷ、ぬちゃぬちゃとした淫猥な水音が森に響いていく。

 それをただ見つめるしか無いケンタウロス達。

 それでも滾る情欲にたまらず情交を始めたノルマド達の姿を間近に見ながら、その下半身に集まる血流が増加していくことは、共感力の高い馬人達にとり、致し方の無いことであったろう。

 

「こ、これは……。いったい、何が起きているのだ……」

 

 副族長のレイク率いる警戒部隊に遅れて、族長のベルクとその息子ローが、ノルマド達の痴態を目にすることとなった。

 

「ベルク、それがもう、何が何やら分からぬのだ。とにかく尋問しようとした矢先に、自分達同士でおっぱじめてしまった。

 ガズバーンがなにか関わっているらしいのだが、その話も詳しく聞くことも出来ぬうちに、このような有様なのだ。

 我らのことも構わぬ様子で、何やら誰かに薬を盛られた、との話のようなのだが……」

 

 警戒部隊の長として最初から尋問に加わっていた副族長のレイクが、ベルクとローへと説明するも、レイク本人もまた、何が起こっているのか全く分からない状況なのである。

 

「意識など、探ってはみたのか?」

 

 ベルクが尋ねた相手はレイクの部下であり、警戒部隊の中でもとりわけ魔導の力が強いものだった。

 その力は魔導師達の読心能力に近いものがあり、敵意や負の気配にはとりわけ敏感にその気配を分析出来る。

 

「はい……。しかしながら、彼ら自身、嘘は言っているようには思えず、個々人の『気の流れ』にも『魔』のもの、『陰』のもの、また我らへの『敵意』『害意』は感じられません。

 おそらく肉体的な情欲のみが異常なまでに昂進している状態であり、それは彼らの言う『薬を盛られた』という点と矛盾したものでは無いように思われます」

 

「さすがにこれほどの交わりを目の前で見せつけられると、こちらもたまらぬな……」

「ああ、精神的なものだけでは無く、彼らの汗や吐息にも、どうやらその『薬』とやらが漏れ出しているようだな。この空間にいるだけで、我らの肉体にも変容の兆しが顕れてきている……」

 

 族長の息子、ローの股間を、答えるレイクがチラリと見遣る。

 

 若さも手伝ってのことか、族長ベルクの息子、ローの逸物は、後脚の股間の陰茎鞘から巨大な逸物を勃起させてしまっている。

 つられて、という訳でも無かろうが、警戒部隊を率いていたレイクや部下達もまた、その勃起を隠しようが無くなってきていた。

 族としての魔導力の強さは、近場の人獣類の『感覚の共有』にも役立ってしまうのだ。

 広場に集まったケンタウロス達もまた、情欲の滾りをその身に覚え始めていたのである。

 

 ……………………。

 ………………。

 …………。

 

 恐るべきかな、この4人のノルマドに仕込まれた『薬物』は、アスモデウスが眷族、淫獣ワイバーンの体液より作られた、強力な催淫作用のあるものであった。

 ノルマドのゲルに訪れたワイバーンとその僕(しもべ)達。

 彼らはノルマドの族長ガルをワイバーン自らが堕とした後の、ノルマドとドラガヌの者達を拉致する計画を周到に練り上げていた。

 ガルへの精神支配で族長等をガズバーンへと送り出し、残ったものへ薬を盛ることで記憶の健忘と拉致への抵抗力を奪う。

 さらに忌まわしいまでのワイバーンの知略は、拉致する者達の中から意図的にこの4人を『逃がす』ことで、よりこの地の周辺に自分達の『淫の気』を広める鉄杭を打とうとすら計画していたのだ。

 

 ワイバーンの体液から精製され、その禍々しいまでの『淫の気』を抜いた、ある意味純粋かつ強力な催淫薬により、肉欲の塊と為した個体を周辺の人獣類達の下へと放つ。

 放たれた個体を『核』として、その情欲にまみれた精神と行動、さらに吐息や汗、体液による周囲への影響により、その者達を間近にした人獣達もまた、情欲の虜となっていく。

 

 生命エネルギーを活力とするアスモデウスとその眷族に取り、特に雄性個体から立ち上る性的エネルギーは容易に探索の対象と成り得る。

 また、そこで発散されるエネルギーこそが彼らの操る『淫の気』へと転換出来うるものであり、それにはまさに打って付けの『薬』だったと言えよう。

 ノルマド達がどこへ向かうかまでの指示はしていなかったようではあるが、その行き先でどのような影響を及ぼすのか、その結果のランダム性を『楽しむ』ことさえ、自らの愉悦と感じているアスモデウス達であった。

 

 魔導の力に長けたケンタウロス達であっても、ノルマド達のあくまでも薬物の物理的な作用とその情欲の昂ぶりに、警戒と言うよりも興味をそそられてしまうことになったのは、魔導探知の力が強いための必然の結果であったとも言えよう。

 彼ら賢馬人の一族もまた、その性欲と精力の迸りが他族に勝ることはあれ、劣るものではないのである。

 

「ノルマドの連中の逸物、長さ太さではもちろん我らの方が勝るが、あの角度と反り曲がり、亀頭のデカさは、体長との比率的には凄いものだな……」

「大きさも、彼らの体格からしたら同族間でやり合うにはかなりのものだろう」

「我らとは体重にして3倍もの違いがありそうだが、逸物だけを見れば我らの半分にもなりそうなものもいる……」

 

 ケンタウロス一族、その平均体重は700キロ程度か。

 対する狼獣人らは、200キロを超す者はいない程度であろう。

 

「逸物の根元の膨らみは、睾丸はさらに後方にあるようだし、あれが亀頭球と言うものなのか? あれでヤられたら、たまらんだろうな」

「尻の具合も良さそうだ……。互いに受けきっていながら、まだ余裕がありそうだぞ、あれは」

「もしや、我らの逸物すらも受けることが出来るのでは無いか?」

「ああ、彼らは肉食メインではあるが、腸壁の可塑性の高さは我らと同一か、より高いのかもしれぬ。期待してもよいのかもな……」

 

 その思索力、演繹を中心とした思索方法から『賢馬人』とすら評されるケンタウロス達の分析力が、ここに至っても十分に発揮されていた。

 語る彼らの逸物もまた眼前にて繰り広げられる肉宴に、最大限にその体積を増していることは言うまでもない。

 

「父上……。見てるだけではたまりませんな……」

「この有様だと、しばらく治まらぬようだな……。話を聞くにしても、ノルマドの者達が落ち着いてからだろう。見張りを残して、それぞれ我らも励み、絡むか。吐精場が賑わうことになりそうだな」

 

 ベルクの言う『吐精場』とは?

 それはケンタウロス達の肉体仕様から生まれた、集団に必須の施設のことであった。

 だが、それよりも先に息子ローの目は情欲の光を放ち始め、その視線は互いの逸物をしゃぶり合い、あるいはついに後口の犯し合いすら始めたノルマドの雄達に向けられていた。

 

「その、父上……。我らが彼らの相手をする、ということは許されましょうか?」

「儂も魔導で探ってみたが、先の報告と同じく彼らの精神に特に警戒すべきことは無かろうかと思う。彼らがそれを望むのであれば、構わんのでは無いか。ただし、彼らと我らでは、身体の構造もかなり違うし、なにより体格の差は大きい。とにかく傷付けぬようにな……」

 

「おおおお、皆!

 族長から許可が出たぞ! ノルマドの者達と共に、我らも楽しもうではないか!」

 

 ローの大声での宣言に、ケンタウロス達が一斉に雄叫びを上げる。

 その下腹部から突き出た巨大な逸物からは、すでに大量の先走りが流れ落ちている。

 

「ノルマドの男達よ。お主等の饗宴に、我らも混ぜてもらっていいか?」

 

 答えによっては強引にことを進めるのでは、とも思えるほどの勢いで、ローが痴態の限りを尽くしているノルマドへと尋ねる。

 

「あ、ああ、もちろんだ……。幾度出しても、何度イッても、この滾りはなかなかに治まらぬ。

 あなた達が加わってくれれば、より早くイくことが出来そうだ……」

 

 他族同士の交わりは仔を成すことは叶わぬが、その淫猥さにおいては強烈なものであるとの認識は、この時代一般的なものであった。

 それゆえにドラガヌの行う『契り』には、相手を『固定する』という他には見られぬ『縛り』があることで、結ばれた個体間の情欲をより高めるものとなっているのであろう。

 族長ベルクの言う『傷付けぬように』という言葉もまた、『傷付ける寸前の行為は、互いに、より昂ぶりを生む』という前提でのものであったのだ。

 

「あ、あんたの、デカいのをしゃぶらせてくれっ!」

「うおっ、ケツがっ、ケツが壊れるっ!」

「壊しゃしねえよ。優しくやってやるからな……」

 

 ローの檄を皮切りとし、そこかしこで、ケンタウロスとノルマドの交わりが始まっていた。

 

 丸い亀頭とその根元に亀頭球という膨らみを携えたノルマド。

 真っ直ぐに伸び、途中2段の膨らみを持つケンタウロス達のそれ。

 互いに形状と大きさの違いはあれど、亀頭粘膜と肉棒への摩擦によって射精中枢が反応し、悦楽の頂点においての吐精を行うという『機能機序』は同じ種族である。

 その族間の交わりそのものは初の経験であろうとも、同じ『器官』と肉体構造を持つ者達の間に複雑なやり取りは必要ない。

 体格的な差と困難さゆえに、主にノルマド達の手と口、肛門によるケンタウロス達の逸物への刺激。

 ケンタウロス達はその強き握力を持つ手と己の口にて、ノルマドの股間を堪能していく。

 

 族長のベルクこそ、しばらくは『見(けん)』に徹するつもりのようではあるが、他種族の中でもその精力が噂になるほどのケンタウロスの種族特性から見ても、いずれは肉宴に加わることは容易に推測できる。

 副族長のレイクと息子のローは最初からその欲望を隠そうともせず、ノルマドと、あるいはケンタウロス同士の情交を楽しみ始めていた。

 

 ………………。

 

「ロー殿っ、もうお互い何発出しましたかな?」

「ははっ、レイク殿っ! 俺はもう20回はイったぞっ!」

「ほう、なら私が今のところ先行しておるようですな。私はもう30回ほどイきました」

「たまらんな。50回は軽くイケそうだ」

「ああ、ノルマドの者達の体力続く限り、抜き合いましょうぞ!」

 

 尻を掲げたノルマドの後口に長大な逸物が届くようにと、後脚を地に着けたケンタウロスの逸物が、ずぶずぶと出入りをする。

 幾度もの吐精であたりには強烈な性臭が満ち、開けたこの広場でも薄れることは無いようだ。

 ノルマドの男達だけでは数が足りぬと、互いの尻にのし掛かり、高い位置のままに後口を犯し合うケンタウロス達もまた、欲情の吐息を撒き散らす。

 

「あ、あんたらの逸物、デカくて長くて、す、すげえ……」

「ノルマドの尻も、我らのものをこうやすやすと受け入れるとは、日頃からかなり鍛えこんでおるな」

「い、いつものとは、また違って、すげえ感じるよっ……」

「待ちきれん! お前の尻を借りるぞっ!」

「願ってもないっ! こっちも尻が疼いてたところだ。ガンガンやってくれっ!」

 

「ああああっ、またイくっ、イッてしまうっ!!」

「もっと、もっとくれっ! 俺の尻にっ、あんた達の汁っ、もっとぶち込んでくれっ!!!」

 

 4人の狼獣人だけでは、さばききれない程のケンタウロス達が集まってきていた。

 おそらくは森の外縁部の警戒での数人(数頭)を残して、この森のほとんどの者達がこの広場に漂う噎せ返るほどの情欲に染まっているのだ。

 

 ケンタウロスのトーテムである馬種そのものが、性欲と精力の象徴として話題に上がることはよくある話であった。

 実際に彼らの一度の吐精にかかる時間はかなり短時間なものであり、その分、とてつもないほどの射精回数を重ねることが出来るのだ。その合計射精量は数リットルにも及ぶ。

 日に幾十度も射精し、大量の精汁を撒くことの出来るその『強さ』は、ケンタウロス達にもより強靱な特性として引き継がれている。

 

「すげえ……。あんたらの雄汁で、俺の腹が膨れ上がってきちまってるぜ……」

「キツかったら出してもいいぜ。これが何度でも続くんだ」

「もっと、もっと、俺のケツに、あんたの汁をくれっ! 俺の腹が破れるくらいっ、あんたの汁がほしいんだっ!」

 

 雄達の乱行は何時間も続いた。

 

 ノルマド達、狼獣人においてもヒト族に比べればその膂力精力ともに遥かに強いものではあったが、体格的な違いからか、その交わりは次第にケンタウロス達の欲望の発露が中心となっていく。

 にもかかわらず、己の3倍以上もの体格である馬人達との交わりを、ノルマド達がこれだけ長時間続けられているのは、やはりワイバーンの僕(しもべ)によって盛られた薬のせいであったろう。

 

 中でも副族長のレイクと、族長の息子ロー。さらには後から自らの欲望を制することが出来ず、宴へと加わった族長ベルク。

 この3人によるノルマドへの凌辱とすら思えるような交わりは、特に凄まじいものだったようである。

 

 悲鳴のようなよがり声を上げるノルマドの尻に、己の逸物を幾度も突き入れては大量の精汁を吐精するベルク。

 息子のローに至っては、もはやその相手は既に失神寸前のようである。

 がくがくと揺さぶられるだけの肉の塊を、これでもかというように犯し尽くすロー。

 

「親父、久しぶりに親父のそんなところを見たな」

「はは、お前にも負けんぞ。どうだ、回数で勝負するか? それともやった相手の数でいくか?」

 

 いつの間にか、ローの口調が変化している。

 一族のもの達の前では族長である父を立てての言葉遣いだったものが、肉欲に囚われている現状では、二人きりのときのものとそう変わらなくなっているのか。

 受ける父親、ベルクもまたそこに疑問は持てなくなっているようだ。

 

「まだまだ若造のお前なんぞには負けんわ。なあ、レイク」

「ははっ、族長のデカいのに犯られたら、ノルマドの尻もしばらくは使い物になりますまい」

 

 ベルクとレイクの話に割って入るのは、まだ意識のあるノルマドの狼獣人だ。

 

「いや、俺らを舐めてもらっちゃ困るぜ。俺らもドラガヌの連中ので、けっこうデカいのには慣れてるんだ。あんたらの相手、まだまだ務めさせてもらう」

「ああ、まだまだ治まらねえ。どれだけイッても、どれだけあんたらの汁をもらっても、ぜんぜん身体の火照りがおさまんねえんだ」

 

 ノルマドの言葉を聞いたローの眉が、何か疑問を感じたかのように、かすかに寄る。

 それには気付かず、ノルマドに答えるベルク。

 

「ああ、どうやら、その薬は、体液を通してか、交わってるこちらにも強い影響が出るようだな。さすがにここまでの回数こなせば、普通なら打ち止めになるところだが、一向に萎えようとせん」

「望むところよ。もっともっと盛り合おうぜ。あんたらのでっかい逸物、俺らが全部、受け止めてやるからよ」

 

 全身に浴びたケンタウロス達の精汁を美味そうにすすり上げながら、答えるノルマドの男達。

 豪快に笑いながら、その口を、その尻を、長大な逸物で犯し続けるケンタウロス達。

 

 そのやり取りを黙って聞いていたローの心中に、形状しようのない『何か』が浮かび上がる。

 

(なんだ、なんだ、これは……。何かが、何かが、おかしい……)

 

 自らの直感にこれまで信頼を置いてきたローであるからこそ、肉欲に染められたはずの己の内心に小さく灯ったその光に、強烈な違和感を感じ取ったのであろう。

 

「ふう、ちょっと身体を冷まして来る。親父達もまだまだ続くんだろう?」

「当たり前だ、あんまり遅くなるともう相手が残っとらんかもしれんぞ」

「はは、急いで戻ってくるさ」

 

 父親やレイクに違和感を持たれぬように声をかけ、その場から離れるロー。

 その脚は村奧にある洞窟の一つへと向かっていく。

 

「親父にはああ言ったが、まずは頭を冷やさないとな……」

 

 魔の森の樹木から、白い霧が立ち上り始める。

 夜明けを待つその霧の奧へと、一人歩き去るローであった。