龍騎と竜人 仮の契り

その1

天幕と褥(しとね)

 

天幕と褥(しとね)

 

 ドラガヌの森の奥深く、若き竜人とその師、ドラガヌの龍騎、3人の男達が自らが張った天幕を見上げている。

 

 竜人帝国ガズバーン、その皇位第2継承権を持つ緋色の龍鱗が輝くグリエラーン。

 3人の中で1人深くフードを被るは、若きグリエラーンの師でもあり、古の力を継ぐ老魔導師ダイラム。

 ノルマドの族長ガルの息子、ラルフと『契り』を結び、若き狼獣人をその背に乗せ大空を待っていた龍騎ドラガヌ一族のリハルバ。

 

 アスモデウスの眷属、ワイバーンの策略によってノルマドの戦力の中心となる狼獣人の若い雄達、彼らと『契り』を結んだ龍騎達が拉致されたのは、2週間ほど前のことか。  

 事態を把握したリハルバの提案により、ゲル(ノルマドの民の移動住居)に残されたもの達を、なんとか龍騎達の故郷、ドラガヌの森へとその庇護を依頼するために送り届けた一行であった。

 

「いよいよだな、リハルバ殿……」

「ああ、そうだな、グリエラーン殿……」

 

 リハルバの生まれた森、ドラガヌの居住地で聞いたノルマド達の消息を追うために、竜人帝国ガズバーン皇太子グリエラーンと、龍騎ドラガヌ一族のリハルバ、彼ら二人による『仮の契り』が交わされようとしていた。

 小型の飛竜(ドラゴン)とも言われるドラガヌの一族に取り、その背を任せるものの選任に当たっては、儀式性の高い『契り』を結ぶ、という非常に珍しい個対個の契約条件が必要なのだ。

 

 すでに『草原を征くもの』ノルマドの狼獣人ラルフとの『契り』を結んでいるリハルバは、本来であればラルフ以外の者をその背に乗せて飛ぶことは叶わぬはずであった。

 そこに降って湧いたアスモデウスとその眷族によるガズバーン帝国中枢の掌握事変が、状況を一変させる。

 

 リハルバにとって盟友たるラルフを、そしてノルマドとドラガヌの仲間達を。

 グリエラーンに取っては父である皇帝と国そのものを取り返すため、龍騎リハルバのその『背』をグリエラーンに『許す』ための必要が、ここに生じたのであった。

 

 リハルバの父、リンバルの協力もあり、ドラガヌの居住地のさらに奧深き森にて『契り』のための『褥』を用意した二人。

 そう広くもない天幕の中に、竜人と龍騎、二人がただひたすらに交わるためだけの空間が用意されたのだ。

 

「おそらくはお二人の『契り』にて生ずる生命エネルギーの発露はかなり大きなものとなるはず。

 アスモデウス達と邂逅しているお二人の発する『気』は、彼奴らにとっても探しやすき、見つけやすきものとなるやもしれませぬ。

 このダイラムが、お二人の『契り』の間、周辺に界を結び、精気が漏れぬようにいたしましょう」

「それはありがたいが、精気を完全に閉じ込めるほどの結界ともなると、そう大きなものは張れぬのではないか?」

 

 グリエラーンの指摘は、幾らかの魔導の知識あるものゆえのものである。

 

「グリエラーン様の仰るとおりですな。界を結ぶとしても、せいぜいこの『褥』を覆う天幕、それと同様の大きさほどでございましょう」

「となると、その、ダイラムには私ら2人のかなり近くにいてもらうことになるかと思うのだが……。しかも結界の『内側』であろうし……」

 

 グリエラーンの言うところを理解したのだろう。

 ダイラムが珍しくその口をにっこりと歪ませる。

 

「はは、それはもうお二人の『契り』の気配を、我が老体の全身で受け止めることとなりましょうな。

 なに、ご心配召されますな。お二人の気配にて引き出される我が肉欲は、己の手で処理いたしますがゆえ」

 

 もしここにノルマドの民がいれば、驚くような返答であったはずだ。

 

「私がこれまで聞いてきたダイラムの異種族との武勇伝の数々、いつかゆっくりとリハルバ殿にも聞かせてみたいものだな」

「ダイラム殿は幾つもの大陸を巡り歩いたとお聞きしています。私にもいつかぜひ、聞かせてもらいたく思いますな。もちろん、色事についてのものも含めて」

 

 グリエラーンら竜人の、あるいは龍騎の一族においても、彼らの中では性的な行為そのものが禁忌とされる文化は存在していない。

 高齢となったダイラムがその精力性欲に衰えを生じるわけでは無いということも、同じ総排泄腔を持つ種族として、リハルバもまた『当たり前』だと捉えている。

 身近で行われる他者の行為によって己の欲情が促されること、その処理行為、あるいは他者との相互行為は、彼らにとってとりわけ『隠す』ものでは無いのである。

 

 それゆえにいっそうドラガヌの行う『契り』の隠匿性に、若きグリエラーンは崇高なる意味合いを感じているのかもしれなかった。

 

「なんだか、我らだけが、と思うと済まぬな」

「ダイラム殿もまた、この場によき相手がおられれば、とは思うのだが」

 

 リハルバの言葉もまた、竜人と同じく総排泄腔を持つ種族として、同じような感覚である証であろう。

 その点においては、彼ら自体が哺乳動物をトーテムとするノルマドの者達とはかなり『違う』感覚を常識とする種族であった。

 

「そうと決まれば、私とリハルバ殿とで、さっそく『褥』に籠もろうかと思う。

 ただ、まあ……。

 リハルバ殿は一晩と言われたが、その、もしかしたらだが、それより長くなるかもしれぬが、ダイラムは大丈夫か?」

 

 グリエラーンの言葉に少しばかりの躊躇いが見えたのは、行為に没頭するであろう己達への羞恥では無く、あくまでダイラムの体調を気遣ってのものだ。

 

「存分におやりなさいませ。たとえ二日三日となろうとも、我もまた、結界は保ち続けましょう」

 

 ダイラムの力強い返答に、頭を下げるグリエラーンとリハルバである。

 

「では、リハルバ殿。始めるか」

「ああ、分かった……。ダイラム殿の守りの中、豊かな『契り』を、2人で成そう」

 

 2人がついに、天幕の入り口をくぐり、用意した『褥』の上へとその身を運ぶ。

 見送ったダイラムは天幕の外、大岩の上にその腰を下ろし、術の詠唱に入ったようだ。

 

 しなやかで美しい羽を持つ分、体格的に優位になるリハルバが、『褥』に横たわったグリエラーンに寄り添った。

 鮮やかな緋色を示すグリエラーンの体色は、その腹と下腹部、四肢の内側は白く艶めいた体表色へと変化する。

 同じく腹側は白く見えるリハルバは、これは他のドラガヌの種族同様、乾いた明るい土の色とも言うべき龍鱗に覆われている。

 

「グリエラーン殿、最後にもう一度だけ確認したい。本当に私と『仮の契り』を結んでよいのだな?」

「今さらなにを言うのだ、リハルバ殿。特定の相手がおらぬ私よりも、ラルフ殿がおられるあなたの方が、つらい選択であるであろうに」

「それも何度も言った。私はラルフ殿らノルマドの、またドラガヌの仲間達をなんとかアスモデウスとやらの手より取り戻したい。そのために、あなたと『仮の契り』を結ぼうと、私から提案したのだぞ」

「感謝している、リハルバ殿」

 

 竜人の一族と龍騎の一族。

 種族の違う2人。

 その間に流れるは、信頼か友情か、はたまた情欲か。

 いや、それらすべてが混じり合い、複雑な『色』を成したものと言って差し支えはないようだ。

 

「グリエラーン殿。あなたこそが、これより始まる『仮の契り』にて、この先の情欲を向ける相手を私一人という形に束縛してしまうことになる。

 帝国皇帝の嫡子としても、あなたはまだ世継ぎとなる『仔』を成してはおらぬのだろう。そのことにはたして憂いは無いものなのか?」

「それも幾度も言ったろう。世継ぎもなにも、まずはガズバーンを彼奴らの手から取り戻さぬことには先のことなど考えることも出来ぬのだ。まずはアスモデウスとその眷族への対応、我が『仔』については、その後の話だと考えている」

 

 グリエラーンの言うように、2人で、いや、ダイラムをも交えた3人の中で、幾度も話し合われたことであった。

 

 アスモデウスに対抗するためにはおよそ世界中の英知と戦力、魔導の力を持つ者達を結集する必要があり、そのための機動力が必要なことは、互いに理解し合っている。

 それでもなお、己の心に決めた方策に縛られるリハルバの、グリエラーンへのまさに『最終確認』なのであった。

 

「相分かった、グリエラーン殿」

「リハルバ殿、いや、契りを為すにあたって、私からはもう、リハルバと呼ばせてもらう。リハルバも私のことをグリエラーン、いや、グリエルと、呼んでくれぬか?」

 

 それはグリエラーンが幼き頃より、逞しく美しい父母に言われ続けてきた呼び名であったか。

 

「グリエル……」

「リハルバ……」

 

 見つめ合う2人。

 そのときが迫り、グリエラーンが皇位継承権第二位を持つ帝国皇帝嫡子としての普段の威厳とは、少しばかり違う面を見せ始める。

 

「リハルバ……。その、私は、この、こういうことが、初めてなのだ……。リードを、してくれるか?」

「もちろんだとも、グリエル。私とラルフ殿も『契り』のときが、互いに相手としては『初めて』のものだった。だが、私はドラガヌのもの。成人の儀式で、父をはじめとした一族の雄達に、十分すぎるほどの教えを受けてきている……」

「それは……。それなりに経験豊富と受け取っていいのか、リハルバ?」

「ああ、そうだ……。それにラルフとももう何年も共に過ごしていたのだ。そこで身に付けたすべての技を、グリエル、あなたに伝えよう」

 

 各族における成人儀礼、通過儀礼にはいささかの禁忌が存在するかもしれぬ。

 幼き頃より学んできた帝王学の一環として、異文化への敬意を学んで来ているグリエラーンもまた、リハルバの語るその内容に、今は触れずにおこうと考えているようだ。

 

 竜人であるグリエラーンと、龍騎リハルバ。

 リハルバがほんの少しその首を傾けながら、グリエルの顔を引き寄せる。

 意図を察したグリエラーンがおずおずと、淡く開いた口先をリハルバのそこへと寄せていく。

 族は違えど、どこか似通った2人の口吻が交差する。

 

 伸びた舌先が互いの歯を確かめるかのようになぞっていく。

 グリエラーンのおののく肉体を、リハルバが優しく強く、抱き締めていた。

 体高と肉体構造の大きく異なるノルマドとの交情とは違い、ドラガヌと竜人とのそれは、どこか同族のそれとも似た形となっていくようだ。

 

「グリエル……。ラルフ殿、いや、ラルフとのときのことを、聞いてもらってもいいか……」

「もちろんだ、リハルバ。あなたにとっての正式な『契り』相手、私にとっても大事な人となるはずだ」

「ありがとう、グリエル……。こういう話をしていいかすら分からぬのだが、もしもラルフが彼奴らの下より助け出されたときのことを考えれば、グリエル、あなたにも私とラルフがどのようにして『契り』を為したのか、知っていてほしいのだ」

「ああ、私も聞きたい。いや、もしかしてそこには『嫉妬』という感情も含まれているのかもしれぬが、それでも、いや、それゆえにか、リハルバとラルフ殿とのそれは、私の情欲を昂ぶらせてくれることだと思う」

 

 似たような身体構造と繁殖方法を持つ族同士ゆえの、どこかその根を同じくした感覚ではあるのだろう。

 それはまた、若き2人の目の前にいる相手に対しての、揺るがぬ『覚悟』の表れでもある話であった。

 

「私がラルフと口吻を交わし、ラルフの脇腹を撫で上げると、彼はもう己の逸物を滾り勃たせてくれるのだ」

 

 リハルバの手がグリエラーンの脇腹を撫で上げる。

 その心地よさ、快感に、横たえた身体を仰け反らせるように反応するグリエラーンの逸物が、スリットの空間を内側から押し広げていく。

 

「そしてこのようにして、逸物の付近に爪を立てれば、その先端から先汁をこぼしてくれる」

 

 リハルバの爪先が、グリエラーンのスリットを上下に擦り上げる。

 その切なくも強烈な刺激に、竜人の声が上がる。

 

「うおっ……、はあああっ……」

 

 そのとき、内部からの圧力に耐えかねたグリエラーンのスリットが大きく割れ、中から巨大な竜人の逸物が飛び出して来た。

 根本、中ほど、先端と、3段階の膨らみを持つその筋肉で構成された白き肉棒は、ぬらぬらとした潤滑体液を、既にしとどに垂らし始めている。

 

「おお、勇ましいな、グリエル。私のものも、もう先露で溢れかえっているぞ」

 

 グリエラーンが目をやれば、リハルバのそれもまた、スリットからその全容を誇らしげに見せつけている。

 こちらの太竿は、目立つ膨らみは根本と先端の2カ所ではあったが、グリエラーンのものより少しばかり長さのあるそれは、全体が捻れたような形状に見えていた。

 その『捻れ』が、情交相手の『腔内』へと差し入れられたとき、如何に強力な刺激を与えるものなのか。

 

 竜人と龍騎の一族。

 2人のそれは、先端だけが粘膜を露出させ、海綿体と尿道で構成される哺乳類系トーテムの人獣とは違い、肉棒のすべてが筋肉で形成されつつ、その全体が白い粘膜によって覆われた逸物であった。

 先に述べたような幾許かの形状の違いはあれど、長さでは騎竜の、太さでは竜人のものに、それぞれ軍配が上がる。

 

 太く強く、3段の瘤を持つかのようなグリエラーンの逸物。

 先端と根本の膨らみと、肉棒全体の捻れを特長とするリハルバのそれ。

 

 単純な抜き差しだけでも驚くほど変化に富んだ動きを成すに違いない二人の逸物は、それそのものが筋肉で出来ているがゆえに、ある程度の動きを己の意思で行うことが出来る。

 それはまた、腰を動かさずとも挿入された肉筒への強烈な刺激が出来るということであり、慣れたものでは意図的にある部分のみを捏ねくり回すことすら可能となるのだ。

 筋肉によって象られたその肉茎の強靱さにより、互いの感ずることが出来る悦楽の度合いは、まさに凄まじい昂ぶりが予感されうるのであった。

 

「龍騎の、ドラガヌの生殖器は初めて見るのだが、凄いものだな……」

「グリエル、あなたのそれも、私の腔内がえぐられそうだ……」

 

 互いの発する言葉は、異種に対しての拒絶から来るものでは無い。

 そこには純粋な『知』への好奇心とともに、自らの知らぬ『新たなる快感』への期待が込められている。

 

「そして、私とラルフの逸物を2人の手で握り締めると……」

 

 ラルフとの『そのとき』を思い出しながら、グリエラーンの手を自らの巨大な勃起へと導くリハルバ。

 

「互いの先端を合わせ、先汁で滑る逸物を2本まとめて擦り合うのだ」

 

 海綿体への血液の充満による勃起を特徴とするノルマドのものとは違い、互いの勃起を跳ね返すような筋肉に由来するグリエラーンとリハルバの逸物の持つ弾力性は、まさに竜人と龍騎ならではのものであった。

 

「おおう、リハルバ、たまらん、たまらんぞ……」

「ああ、グリエル。グリエルのが私の先端を、えぐるように当たっている……」

「ぬめりが、ぬめりがたまらん……」

 

 龍騎と竜人の情交は、彼らの若さと体力精力を思えば、はるか静かに進行していた。

 

 互いの手を重ね合わせ、2本取りにした逸物を上下に扱き上げる。

 大量に噴き出す先汁が褥周辺の湿度を上げ、二人の間によりいっそうの淫猥の気配を醸し出していく。

 

 ぬちゃっ、ぬちゃっ、ぬちゃっ。

 びちゃり、びちゃり、びちゃり。

 

 じゅくじゅくと垂れ落ちる先露をすくっては、互いの口へと運ぶ2人。

 その舌先が舐めとるのは、もちろん相手と己の汁が混ざり合った甘露である。

 

「ああ、もっと、もっと強く扱いてくれ、リハルバ……」

「グリエル、もっと強く、2人の逸物がひしゃげるように、強く握り締めるんだ……」

 

 竜人、龍騎の一族ともに、種族特性として見れば、たとえ一晩という限られた時間であっても、互いに何十回もの吐精を可能とする2人である。

 もっともその内包する生命エネルギーの高さそのものが、アスモデウスと淫獣らに目を付けられることになった引き鉄であることもまた、さもあらんと思われてしまうことでもあったのだが。

 

 契りの最初の吐精は暗黙の了解なのか、互いの目の前で行うこととするようだ。

 口やスリット等の肉腔を使わず、互いの手による刺激のみで行う吐精。

 それは族の違うもの同士での行為としては、ある意味『基本』ともなるものではなかったか。

 

 肉棒全体が粘膜で覆われた二人の逸物。

 先端の亀頭部表面のみが粘膜である、ノルマドら哺乳類系トーテムの一族。

 

 粘膜面積を単純に快楽をより強く感じ取れる単位と単純化すれば、前者の方が圧倒的にその物理総量が上回っていることは明白であった。

 

 そこに当てられた、しなやかではありつつも、鱗状の外皮を持つ互いの『手』。

 スリットから湧き出る潤滑体液とともにその『手』で互いの逸物を扱き上げれば、それだけで吐精を導くには十分以上の快感が生み出されていく。

 

「あっ、いいぞっ、グリエルっ、もっとっ、もっと強くっ……」

「リハルバっ、たまらんっ!! リハルバの手がっ、手で扱かれるのがっ、いいっ、気持ちいいっ……」

 

 褥の中、2人の行為が進む中、天幕の外ではダイラムがその精神を集中させている。

 

「これは……。

 二人ともその若さゆえ、もっと激しく行くかと思うておったが、まさかこのような立ち上がりになるとは思わなんだが……。

 それにしてもたまらぬな……」

 

 竜人の中では珍しく、常にローブのような衣を羽織っているダイラムではあったが、今日このときに限っては、その衣も脱いだようだ。

 帝国皇帝グルムとも並ぶと言われたその隆々たる体格は老いの片鱗すら見せず、大岩に下ろした両脚の間に聳える逸物は、弟子でもあるグリエラーンのものよりも、その太さではまさっているようにすら見える。

 

 大魔導の最後の一人と言われるダイラムにはその魔導の力により、天幕の中のすべてがまさに手に取るように『視えて』しまっているのだろう。

 若き二人の吐精は勢いに任せ、激しい情交から始まる。との予想は外れたようであったが、そこに『視える』静かな行為もまた、ダイラムに欲情の嵐をもたらしていた。

 

「この精気を浴びながら抜かずに堪えること、出来そうにはござらぬな……」

 

 固定された結界は、一度その形状を安定させてしまえば、その維持にはわずかな魔導力の流し込みでよいのか。

 結界にて外に漏らさぬよう仕組まれた若者達の『精気』が、ダイラム一人の身に降りかかっていく。

 

 片手ではとうてい握りきれない太さのダイラムの肉棒が、長いストロークで上下に扱き上げられる。

 逸物から流れ出る潤滑体液をまぶしたもう片方の手の指先が、開ききった自らのスリットの『中』を、水音を立てながら掻き回す。

 吐精前の股間から垂れ落ちる透明な液体が、ダイラムの尻の下の大岩をじっとりと濡らしていく。

 

「中の二人より先にイくとは、思ってもおらなんだが……。

 このダイラム、もう、たまらぬ……。うおああっ……。イくっ、イくぞっ、イくっ……」

 

 夥しい量の白濁した液体が、ダイラムの逸物から噴き上がった。

 その強烈な匂いと精気を、天幕の中の2人もすぐに感じ取ったようだ。

 

「ああ、ダイラム殿が我らの精気に当てられて、イッたのだな」

「私達も、負けてはいられないな、リハルバ」

 

 笑いながら、よがりながら、2人の手の動きがより激しいものへと変わっていく。

 

「あっ、ああっ、出るっ……。私のっ、私の汁がっ、リハルバに扱かれてっ、汁がっ、汁が出るっ!!」

「互いのスリットにっ、スリットに汁を掛け合おうっ、グリエルっ!!」

「ああっ、リハルバっ! 出すぞっ、私のっ、精汁がっ、出るっ、出るっ、出るっ!!!」

「グリエルっ、グリエルっ! 私もっ、いくぞっ、イくぞっ、イくっ、イくっーーーーー!!!」

 

 この夜、二人の初めての吐精は、互いに相手のものを扱きながらのものであった。

 逞しい腹と胸をしとどに濡らすほどの精汁が、天幕の中を濃厚な『あの匂い』で満たしていく。

 立ち上るその匂いと混じり合った二人の若くも満ち溢れた精気は、ますます互いの情欲を昂ぶらせていくのだ。