賢馬人一族と新しき淫獣の出現

その6

ダイラムと

 

ダイラムと

 

 ヒトの上半身と馬体の下半身を持つケンタウロス。

 硬い龍鱗に覆われ、総排泄腔を持つ竜人の一族。

 立位であればローの上半身とそう高さも変わらぬダイラムではあるのだが、下半身から伸びるその長大な逸物を、どのようにして『受け入れる』かについては、ロー側の体位や身体的な『届き』をどう考慮するかが問われてしまう。

 

「あなた方の総排泄腔は、先ほどの話だと、たしかスリット上部から腹側方向への挿入の方がよいのだよな?」

「そうですな。『下』の方は余地がほぼ無いため、『上方向』『腹方向』への挿入でお願いしたい。この白き腹のかなり上部まで外部からの挿入物を受け入れることは出来ますので、もしやその全長も、と自分でも期待してはおるのですが……」

「となると、あなたには仰向けになり、腹を上側に向けぬことにはこちらからの挿入は不可となるな……。そこはノルマドや、我らが同族同士で行う尻を使った行為とは、かなりの違いになってくる」

 

 ダイラムの逞しき肉体を、周囲をぐるりと周りながら観察するロー。

 それは己の欲求の解消という具体的な行動目標が定まった上での、ケンタウロスらしい理知的な判断へと辿り着くための検分であろう。

 

「我らが同族同士の尻を使うときには、双方が立ったまま、挿入する側が前脚を上げた形で馬体後方部を押し付けるような体位を取る。

 また、先ほどのような高低差の無い広場でノルマドの男達との交情では、俺達が後脚を折り、地面に横たわった、あるいはうつ伏せになって尻を掲げたノルマドの尻へと、こちらの逸物を挿入していたんだ。

 もちろんその形でも交わることは出来るとは思うのだが、ダイラム殿が良ければもう少しこちらの肉体の自由度を上げての行為としたい。

 それには大石などの少し高さのある場所にダイラム殿に横になってもらい、俺の方は後脚を折ることなく、自由に腰を使えればと思う。

 もちろんこちらの自由度が大きくなるため、その分、ダイラム殿への負荷はかなり大きなものとなってしまうはずなのだが……」

 

 ローの分析の通り、総排泄腔を持つ種族にとって『後ろから』という体位よりも『前から』の身体的アプローチの方が、挿入側の動きの自由度が高まることは明白であった。

 上半身だけを比較すればダイラムの方が竜人としての肉体の厚みと重さで凌駕するが、馬体形状を保つケンタウロス族の下半身においては、その太さ大きさ逞しさゆえに、竜人の中でも偉丈夫であるはずのダイラムでさえ、翻弄『される』側になるであろう。

 

「なんの、それこそ受けて立ちましょうぞ。この老体に、高き喜びの声を上げさせてもらいたくも思いますな」

「まったく、あなた方にかかっては『秘め事』という感覚は本当に無いのだな……。そうとなれば、ついでというか、ここで言っておく。

 俺らケンタウロスは、一度一度の射精はおそらくあなた方に比べれば、かなりの短時間で行うんだ。その分、回数がすごいことになるので、そこは理解しておいてくれ」

 

 苦笑しながらも、ダイラムら竜人や龍騎達の『常識』をだんだんと受け入れ始めたローであった。

 

「俺はやり始めると、その、俺自身の射精しか頭になくなってしまうかと思う……。その場合、ダイラム殿の喜びや射精に気が回らぬこともあろうし、そもそもあなた方の射精への機序が分かっていないということもある。

 その、俺の相手をしてくれるダイラム殿にもせっかくであれば『楽しんで』ほしいとは思うのだが……」

 

「ああ、そうですな。そのことについては少し説明しておきましょう」

 

「我らは哺乳動物をトーテムとするあなた方とは違い、性的な興奮を得るための器官としては総排泄腔であるスリット周辺及び内部への挿入と運動刺激、もしくは生殖性器への慰撫と運動刺激が主たるものとして存在しております。

 あなた方が行いうる肛門への異物挿入において尿道を取り巻く前立腺器官への刺激による射精情動の獲得は、身体構造上持ち得ない形となっているわけですな」

「となると、俺が、その、この俺の逸物をあなたに『挿れて』『動かす』ことは、普通にあなたの快感に繋がると考えてよいのだな?」

「その通りでございますな。さらにあなたの逸物を私のスリットに挿入する場合、私の生殖性器もまた性的な興奮によって引き起こされる筋肉緊張によりスリット外部へと出てまいりますので、性器そのものがロー殿の下腹部と擦れ合う物理的な刺激も、また心地よいものとなるでありましょう」

 

 これからその欲情を交わし合う2人の会話とは思えぬ内容ではあったが、他種族との初回の絡みにあっては、このような情報交換こそが必要とされるものであったのか。

 

「分かった!

 それでは、ダイラム殿、よろしく頼む」

「グリエラーン様、リハルバ殿の交わりについては場所を選ばぬ訳ですから、私とロー殿の体位確保のために、よい場所をまずは見つけましょう」

「ああ、それならここの少し先に、よい岩場がある。少しばかりの平地もあるので、グリエラーン殿達の交わりにもよい場所かと思う」

 

 ローの案内にて場所を移す一行。

 辿り着いた場所はダイラムの半身ほどの岩場がある草地であった。

 

「ああ、ここなら我らも心地よく交わることが出来そうだ」

 

 グリエラーンの言葉は、ローに取ってはやはり『気恥ずかしさ』を誘引するものではあったのだが、極力その驚きを出さぬように努力している賢馬人である。

 

「ダイラム殿……。そこの岩に仰向けになっていただき、その、俺のを、受け入れてくれ……。正直、もう、我慢できんのだ……」

「承知。少しばかりロー殿の逸物を我の手で扱かせていただき、その後にスリットへ挿れていただきましょう」

 

 わずかばかりの傾斜がついた岩の上面にダイラムがその身を横たえる。

 近付いたローの逸物に手を伸ばすダイラム。

 

「亀頭部の長大さゆえにその下部と、肉棒中部の2カ所の膨らみを持つロー殿の巨大な逸物。

 これが儂の腹の中を動き回るかと思うと、たまりませぬな……。

 おお、先汁もすでに流れ落ちており、性臭も凄いものですぞ……。

 ロー殿、我ら竜人の硬き鱗状皮膚での扱き上げもご堪能あれ」

 

 その言葉通り、馬人の腹の下、溢れ出る先走りにまみれた両手で長大なローの逸物を握り締めたダイラムが、ゆっくりとした上下運動を開始する。

 

「おおおおっ、先走りのぬめりと、ダイラム殿の固い手とっ……。これはたまらんっ……」

「互いに顔が見えぬのはちと残念ではありますが、我らの交情にて興奮されたグリエラーン様とリハルバ殿の交わりを見て、視覚的にも興奮してもらえればとも思いますな」

「あなたが私の腹の下にいるというだけで、俺はもう興奮の極地にいるのだが?」

 

 これには様々な異種族との性的交情の経験のあるダイラムにも、予期せぬ答えであったようだ。

 

「ああ、あなた方の交情では、互いの顔を見遣ることはほぼありえないことでございますな。これは失礼しました……」

「いや、もう、あなたの手だけで俺はイきそうになってるんだ……」

「おお、私もまた興奮しております。スリットも十分に潤っておりますので、いつでもよいですぞ、ロー殿…」

「済まぬ、ダイラム殿。位置的な把握がまだあなたの肉体については出来ておらぬのだ。あなたの方で、正しい場所への誘導を頼む」

「承知いたしました。それでは……」

 

 ビクビクと上下に揺れるローの逸物の先端を、自らのスリットになすりつけるダイラム。

 割れ目から飛び出した竜人独特の瘤だらけの白い逸物が、さらに潤滑体液を溢れさせていく。

 

「ああ……。先端が気持ちいい……。そこか、そこなのだな、ダイラム殿……」

「ええ、『ここ』です、ロー殿……。おおっ、ああっ、そっ、そのまま腰をっ、腰を少し前にっ!!」

「ああっ、入ったのかっ! 俺のがっ、ダイラムの殿の『中』に入ったんだなっ!!」

「そのままっ、もっとっ、もっと奥にっ!!」

「ああっ、すごいっ! 俺のが、俺のが挿入っていくっ!! 締め付けがっ、すげえ締め付けだっ!!」

 

 見ればすでにローの逸物の半分以上がダイラムのスリットへと呑み込まれていた。

 老竜人の白い下腹部がぼこぼこと膨らむ様は、グリエラーンとリハルバにとっては、悦楽を生むあまりにも分かりやすい指標となってしまう。

 

「おおおおっ、まるで腹に丸太を抱えたような、なんという充実感! これで動かされれば、たまりませぬぞ、ロー殿っ!」

「いいのか? 感じてくれてるのか、ダイラム殿っ?」

「この太き、長き逸物が、私の腹をえぐり、掻き回すのですっ! これで感じぬものは、竜人の中にもおりますまいっ!!!」

 

「ああ、リハルバ……。ロー殿の、あれほどの逸物がダイラム先生の中に……」

「すごいな、グリエル。あそこまでの巨大なモノが、どんどん呑み込まれていく……」

「私達も、私達もまぐわい合おう……」

 

 柔らかな草地には、横たわる若き竜人と龍騎の2人。

 旅立ちにあたり、己の甘えを無くすためか『老師』『先生』という敬称をあえて使わなくなっていたグリエラーンであった。

 その皇帝嫡子が、ふとまたその言葉を使ったのは、教え子として各種族の性的な交わりについての講義を受けていたことを思い出してであったのか。

 

 グリエラーンとリハルバ。

 そのスリットからは互いの生殖性器はすでに臨戦態勢へと外部に飛び出し、その先端と割れ目から、潤滑体液がとろとろと漏れ出してさえいる。

 

「挿れ合おう、リハルバ……」

「ああ、グリエル……」

 

 重なり合った2人が慎重に狙いを定め、互いのスリットへと己の逸物を差し込んでいく。

 ドラガヌの森で行われた『仮の契り』にて、何十回もの相互挿入を果たした2人に取り、それはもう極々『当たり前の』動きとなっていた。

 

「ああ、あなた達はあのようにして交わるのか……。たまらんっ、たまらんっ!! ダイラム殿っ、いいかっ? 俺のをっ、俺のをもっとっ、もっと挿れてもっ、大丈夫かっ?」

「構いませぬぞっ、ロー殿っ!! このダイラムっ、ロー殿のすべてを受けきってみせましょうっ!!!」

「うああああっ、挿入っていくっ! 俺のが挿入っていくっ! すげえっ、根本もっ、途中もっ、先端もっ! 全部っ、全部が締め付けられるっ!!」

「さすがに腹一杯に詰め込まれましたな……。いや、これは、私もここまでの受け入れはっ、はっ、初めてですぞっ……」

 

 見ればその根本、陰茎鞘がダイラムのスリットへ密着するほどの、見事な挿入となっていた。

 広がりきったダイラムのスリットから、泡だった潤滑体液が滲み出す。

 ローの吐息の荒さから見れば、なんとか押さえ込んでいた射精衝動のコントロールは、もうすでに限界値に達しているようだ。

 

「ああっ、もうダメだっ! 我慢ならんっ、ダイラム殿っ! 済まぬっ、済まぬっ、もうあなたのことをっ、構っておられぬっ!!」

 

 悲鳴のようなローの雄叫びであった。

 

「思うがままにっ! ロー殿っ、あなたの好きなように動いてくだされっ!!」

「おおおおっ、たまらんっ、たまらんぞっ!!!」

 

 それまではダイラムのリードに任せていたローの動きが、一気に加速する。

 出し入れのスピードはもとより、その腰の動きから発生する抜き差しの長さが、同族間の交情とはまったく違う悦楽をダイラムの肉体へと打ち込んでいく。

 

「ああああっ、すごいっ!! 腹がっ、はらわたが抉られるっ! ああっ、ロー殿っ、ロー殿っ!!」

「おっ、おっ、おっ、おっ、うおおおおおっーーー!!!」

 

 もはやダイラムの声に答えることもせず、ただひたすらに腰を振り、ダイラムの下腹部をまさに一つの『吐精壺』と見なしているが如くの、ローの動きであった。

 

 その深き栗色の獣毛をぐっしょりと濡らしながら、ローの下腹部がダイラムの逸物を互いの腹の間で押し潰さんばかりに擦り上げる。

 粘膜に覆われた性器と、最大限に開かれたスリット。

 さらには腹腔までを押しのけながら出し入れされる長大なローの逸物。

 強く、猛々しい、ストロークの長い前後運動が、ダイラムの肉体を海上の嵐に巻き込まれた小舟のようにと揺さぶっていく。

 

『うぐっ、あっ、あがっ、ぐうっ』

『あっ、あっ、我が腹がっ、ああっ、ロー殿っ、ロー殿っ……』

 

 たとえケンタウロスの同族同士であっても、慣れぬものであれば声を上げてしまうほどのこの荒々しさが、ローに取っては『普通』なのか。

 内側からの圧力に変形するダイラムの白い腹が、およそ胸近くまでもが、のし掛かるローの一突き毎にぼこぼこと蠢いている。

 端から見れば、内蔵への損傷すら危惧されるその凌辱に耐えるのが、竜人の竜人たるゆえであるのか。

 恐るべきことに、それらの激しい刺激こそがダイラムの快感中枢を昂ぶらせ、ローと同じく精汁の噴出を加速していくようなのだ。

 

「あっ、あっ、当たるっ、当たりますぞっ!! ロー殿の逸物がっ、我のっ、我の腹奧にっ、当たりますぞっ!!!」

「おおおおっ、おおっ、おおおおっ!! イくぞっ、イくぞっ、イくっ! ダイラム殿のっ、腹にっ、腹にイくっ、イくっーーー!!」

 

 交わりの開始から、あっと言う間のことであった。

 ローの下半身、その馬体の尻がダイラムの上で激しく痙攣のように小刻みに動く。

 吐き出される精汁は、竜人や龍騎に比べても数倍の量を誇るのだ。

 

「ああああっ、スリットがっ、我のスリットがっ、溢れるっ、ロー殿の汁で溢れるっ……」

 

 高い体温を維持するケンタウロスの体液が、幾分か低い体温となる竜人の腹を満たす。

 ぶしゅぶしゅと、ぐじゅぐじゅと、高い粘性を持つ白濁汁が見る間の内にダイラムのスリットから噴き出していく。

 巨大な体積を受け入れるダイラムの腹腔であっても、1度の吐精にて、すでに収まらぬ量の精汁が放たれたのだ。

 

「まだだぞっ、まだ終わらんぞっ、ダイラム殿っ!!」

「承知っ!! このダイラムにっ、二言は無いですぞっ!!」

 

 一時の休息も置かずして、再びローの激しい抽挿が再開される。

 激しくいたぶられるダイラムの肉体は、竜人の強靱さゆえに持ちこたえているのだろう。

 

「すごいな、グリエル……」

「ああ、あれは……。ダイラム先生も、たまらないだろう……」

 

 己の肉棒を互いの肉腔内に沈め合った2人。そのわずかな体動が、密着した下腹部からの快感を全身へと伝達させていく。

 目の前で繰り広げられていく激しい情交とは一見正反対の、だがその内実はローとダイラムとのそれに比肩しあうほどの悦楽をもたらす交わりであった。

 

「ダイラム殿は、あれが続いても、大丈夫なのか……?」

「竜人の体力を舐めてはいけない、リハルバ……。おそらく先生……、ああ、ダイラムも、かなり『感じてる』はずだ……」

「杞憂であればいいんだが、さすがにあれほどの交尾は、私もあまり、見たことが無くて……」

「ラルフ殿とのそれでは、少しの遠慮があったのだろう、リハルバ」

「無かったと言うなら、嘘になろうな……。ただそれは『満足がいかない』ものでは決して無かったのだ、グリエル……」

「もちろん、それも分かっているさ、フリエル……」

 

 その隣ではまさに『激しい』交情が行われているとは信じがたい2人の会話ではあるが、性規範にほとんどの禁忌が存在しない龍騎と竜人との間であれば、それもまた『普通』のことではあった。

 

「おおっ、イくっ、またイくぞっ、イくっぅぅぅーー!!」

 

 繰り返される、賢馬人の雄叫び。

 何度も繰り返される挿入と、射精時の震え。

 その度に、馬体と人体の相乗した重さを受け止めるダイラムの興奮も昂ぶっていく。

 ある種の性癖と性感の獲得において、その『重さ』もまた、悦楽の大きな部分を占める要素でもあった。

 挿入の角度と深さ、その双方がダイラムの下腹部の盛り上がりで視覚的に確認できるほどの交わりである。

 互いに顔を見合わせぬがゆえか、あるいはもし垣間見ることが出来ればより激しい情交となるのか。

 その結論は分からぬまでも、ケンタウロスのローにとってはダイラムの声とその体表の感覚が、ダイラムに取っては全身に感じる圧と濃厚な性臭が、互いの興奮をより深く、より高みへと誘っていく。

 

「ああっ、私もっ、ロー殿の腹に擦られてっ、中を抉られてっ、イくっ、イくっ……」

「まだだぞっ、ダイラム殿っ! 俺はまだっ、まだ6回しかっ、イっておらんっ!!」

「何度でもっ、何度でも受けきってみせましょうっ! ロー殿っ、ロー殿っ!!」

 

 いったいどれほどの時間が過ぎたのか。

 吐息、喘ぎ声、土と岩と、人獣類達の肌が立てる湿った水音。

 そのすべてが木々の間に、豊かな大地に吸い込まれ、ようやくの静けさが森へと戻ってきた。

 

「済まぬ、済まぬ、ダイラム殿……。身体に、無理は無いのか?」

 

 我に返ったローが、大岩にぐったりと横たわるダイラムへと声をかける。

 

 しばらく前に己等の情交に十分な満足を得たグリエラーンとリハルバもまた、馬人と老魔導師の元へとその身を近づけていく。